間違いではない
翌朝、男は妻にこのチョコレートは何だ、と訪ねるが、さぁ、という。酔っ払って自分で買ってきたんじゃないの?と言われる。男にとっては不思議な出来事だったが、妻にとっては、たかが、100円程度のチョコレートだった。それ以降、チョコレートの話題は途絶えた。
男は会社につくと、朝にやろうと思っていた会社の資料が会社の机の上においてあった。なんらかの者が好意で男のために資料を作っておいたようだ。署名の欄にも、あたかもその男が書類を作成したかのように、男の名前が書かれている。表紙をめくって読み始めると、ひどい間違いだらけだ。文章は読みにくいし、英単語のつづりは間違ってるし、バラバラだ。
その日、その後も、熱すぎて薄すぎるお茶を誰かが男だけの机においていったり、読みもしないスポーツ紙をおいていったり、とにかく男が見えないところで知らぬ者が、いろいろやってる。迷惑といえる迷惑はひとつもないが、必ずしもありがたいともいえない行為を、次から次へと。男は不機嫌になる理由はひとつもなかったが、不思議でしょうがなかった。人に聞くにはあまりにも些細で、あまりにも多くな出来事ばかりで、話す気にはならなかった。
男は、その日のことを心に秘めることにした。
--------------
これで今年は店じまいです。
読んでくれた方、コメントやトラックバックを残して下さった方、
どうもありがとうございました。ステキなお正月を過ごして下さい。
来年もよろしくお願いします。
ヒナミケイスケ