9.30.2009

牛のバストショット

ナナちゃんはお肉が大好き。野菜もちゃんと食べるよ。それでも、ママもパパもナナちゃんもお肉が一番好きだからって、焼き肉屋さんみたいに牛さんを「一頭買い」したんだって、これ本当に。

そしてお肉がたくさん家に届いたのだけど、思ってたより大きかったの。それもそのはず、牛さんをサンマイオロシにしたようなものだもの。お母さんがとっても大変そうだった。お父さんがいうの、チマチマと炒めものなんか作ってたらいつまでもなくならないって。片っ端から焼いて焼き肉パーティした方がいいって。片っ端から友達よんで、片っ端から焼いちまえって。肉ははらいっぱいクってナンボとかなんだか。

ナナちゃんが牛さんに名前つけちゃったのがいけなかったのかも。モームスって。牛さんの足とかベロとか胸郭とか、あんまし見たことなかったから。ほんとうはちょっと怖かったり可哀想と思ったりしたんだけど、大好きなお肉だからお名前つけてあげれば大丈夫かなって。顔は、最初からなかったけど。

焼き肉パーテイにきたパパやママのお友達にも、一生懸命、モームスちゃんのカルビなの、とか言いふらしちゃったから。

だから、みんなニコニコしてたけどあんましお肉が減らなかったのかなあ。

北極星と彗星

午前3時、とある秘密のアジトで二人の強盗が祝杯をあげていた。長い月日をかけて計画していた大がかりの銀行強盗を大成功におさめたばかりだった。無論、プロとして金さえ手に入れば成功も大成功もないのかも知れないが、本件に限ってはあまりにも段取りが出来すぎだったため自画自賛しなくにはいられなかった。ものの三分間でガードマンを制圧し、客をみな床にふせさせ、拳銃を責任者につけて金庫を開けさせて、誰一人正体を見られることなく逃げられたのだから。パトカーのサイレンが遠くに聞こえたころは、とっくに金はかくされていたし、二人はアリバイづくりのためにそれぞれの持ち場に戻っていた。

ほこりだらけのアジトには少し不似合いな、高価な赤ワインを空きカンにそそいで飲んだ。やがて夜が明けるとともに前日の興奮も冷めはじめ、自然と口数も減ってくる。それまではずっと極限の状態でいたものだから、気がゆるんだとたんに疲れと眠気に襲われた。この者にとって強盗は職業であって、モラルどうこう語る以前に生まれつきの才能なのだから仕方ないというほど。そんな人が大きい仕事を終えた後は、多かれ少なかれセンチメンタルになってしまう。明日になれば、二人はしばらくの間離ればなれになる。二人まとまってパクられるリスクを避けたいのが理由だが、せっかく盗んだ金を楽しむ時がなければいけない。

お前は、どうする。

ボラボラ島でも行くかな。
お前こそ、どうする。

適当に合コンでもしていようと思う。また、そちらから連絡くれるな?

おう。じゃあ、な。

9.20.2009

季節の便り

お元気ですか。

すっかり秋です。私は秋が大好きです。食べ物も美味しくなります。涼しいのがステキです。何よりも、あたりが静かになります。夏という騒がしい客人が、やっとこさ帰った後の静けさ。

今日は一人だったので、久しぶりに誰一人とも言葉を交わさずに済みました。その分、秋の音がより鮮明に聴こえたのかも知れません。この公園のベンチに座ってるとまわりの音がひとつひとつハッキリ聞こえます。スズムシのりんりん、コンビニ袋のかさかさ、通り過ぎる自転車チェーンのじりじりかたん。

外の空気が気持ち良いので散歩がてら銭湯に行ってたのです。家に風呂があるのに敢えて、というのは考えてみればゼータクですが、たまに行きたくなります。知らないオッサンたちと肩をならべて風呂に入ることで、何故だか心が浄化される気になるのです。理由は良く分かりません。

公園に来るまで、コンビニであずきバーを買ってかじってました。

秋が大好きです。
ヘックショイ、んにゃろう。

9.15.2009

働けの日

時は3028年9月13日。第十五湾岸戦争の休戦を記念する、日本・英国・タンザニア・ベトナム連合国それぞれにとって大事な国民記念日だ。日本においては明日が振替休日となっており、続く振込詐欺撲滅記念日と第二十三ブラジル闘争の戦没者を追悼する日が、大型連休ピンクウイークを構成する。そこから秋休みが始まり、日本秋季グルメウイーク前半、歴代天皇陛加重下平均誕生日を挟み、グルメ週後半。ただ。今年のグルメ週の最終日は日本プロ野球を思い出す日と同日になってしまっており、したがって多くの家庭でグルメウィークの最終日に行われる肉食祭が、日本プロ野球を思い出す日の恒例行事であるファミリー1,000本ノックの直後になってしまう。暦がいかんせん歪だが、いずれにしろこの季節になるとクリスマス前々々々々々々々々々々夜祭が待ち遠しい子供たちが、微笑ましい。

この頃、日本人がもっとも楽しみにしている国民記念日は4月1日の「勤労の日」だ。昔では多くの日本人が生活をささえるために概ね週5日間は家の外で日中を過ごし、何をしていたかというとそれぞれに適した具体的な作業をするために「会社」などの「職場」に「集合」し、その作業の報酬として金銭を定期的に受け取るのだった。今とは違って、何かしらの事由で「クビ」や「自己退職」(同定義らしい)に合うと収入が途絶えてしまうことから、「働く」ことは大きなリスクを伴った。

しかし、当時は「働く」文化が大いに人々に支持され、上手に「できる」か「できない」のいずれかで社会的地位が実質的に決まってしまったり、結婚相手としての適正の判断材料とまでされていたそうだ。あまりにも仕事に熱狂するあまり、命を捨ててしまう者もいたそうだ。ただし、「過労死」という正式な記録はなぜだか稀である。仕事という概念が驚異的な影響力を持っていたことだけは間違いない。この日の行事として、人々はミツビシスミチュウ公園や、サントリー食堂、などに集まって優雅なブランチをする。

9.12.2009

オートマチック

先週。久しぶりにお酒で気持ち良くなれたのは良いものの、いまにもコトンと落ちそうそうだったので電車を途中下車してタクシーで帰ることにした。深夜帯で果てしなく続く下り電車で寝過ごすことほど悲惨なことはそうない。おりたのは新橋で、都合良く大通りは空車のタクシーでいっぱいだった。同じお金を払って贅沢するなら白い個人タクシーにしようと考え、少し吟味してからタクシーを選んだ。

手入れの行き届いた車内とは対照的に、と言えば実に失礼な言い方かも知れないが、運転手はブルドッグのような50才代の男だった。どこへ、と表情一つ変えずにたずねてくる。江東区の北砂、と切り出したとたんに運転手は割り込んだ。あの川の側の工事現場の隣のマンションね、と信じられないくらいピンポイントで行き先を当ててきた。酒が入ってるとはいえ驚くには十分で、車に揺られながらポカンとしていた。

時に限って運転手は喋り嫌いのようで、なかなか会話らしき会話が成り立たない。不思議なことが起きるものだと足りない頭で思った。

9.02.2009

殺さないでください

ネクタイがとてもとても嫌いなのです。首をしめられることは決して気持ちの良いものではないと思うのだけど、何か間違っているだろうか。きらびやかなシルクを首に巻いて誇らしげにたたずむイメージに、どうもある種のオカルトさすら覚えてしまうのだ。

だから、よほどのことがないかぎり自ら絶対買わないし、願わくは貰いたくもない。もちろん、もらった場合は気持ちはありがたくいただくし、礼儀として何度か着用する。そうでもしないとあげた本人と何の罪もないネクタイが浮かばれないというか、事態に収まりがつかない。これは多分、僕の病気なのだ。病気というのも、あげた人が僕を殺そうとしてるのではないかとものの一瞬、想像してしまうのだ。一度、他人からもらったネクタイを見て当時の彼女が嫉妬したことがあった。僕はいったい何人に殺されようとしているのだろうと、ひどく動揺した。

どうしても買うなら、優しい青のものに限る。赤、黄色は無理だ絶対。

持ってるネクタイのレパートリーは華やかとは言いがたい。数は少ないし、古くてぼろぼろだ。おのずと、取引先などはワンパターンに徹する僕の身だしなみのたるみを認知することになるが、こればかりはどうにもできない。

そうと言いつつ、恥ずかしながら完全に世間に見放されてしまうわけにいかないことを主因に今朝も自分の首をしめようとしている。今日はちょっと、身体の拒絶反応がきつい。