12.22.2005

ドッペルゲンガ

ある大都会で暮らす男がいた。

その男は住まいも、職場も、遊びに行くような所も、大抵その都会の中に収まっていた。男は匠にバスやタクシー、地下鉄や電車を利用して、どんなA地点からどんなB地点への距離を30分で航海することができた。美味いものや洋服、あらゆる流行にも敏感だったし、男性の友人もガールフレンドも沢山いた。そうとはいえ、浪費者ではなかった。仕事はそれなりの給料で、金持ちでもなかった。すばらしい知性に恵まれているわけでもなく、趣味といっても、人並みにお酒好きで、クルマ好きで、たまに流行の映画を見るくらいだった。

ただただ、男はこの都会で暮らすことが幸せだった。
男はこの都会での暮らしが本当に大好きだった。

そんなある日、男は帰りの地下鉄に乗ろうとした。同じタイミングで、なんだか見たことのあるような顔をした男が一緒に乗った。二人はそれぞれ車輌のドアの左右の脇に立った。じっと見つめない程度で男はもう一人の男の顔をもう一度確認し、記憶をたどった。朝の通勤電車でよく見かける顔だった。帰りの電車でバッタリ会うとは大した偶然だ。

相手の男もそう思ったようで、他に思いつく動作がなく、お互い軽く会釈をした。じっと見つめない程度で男はもう一人の男の顔をもう一度確認し、記憶をたどった。朝の通勤電車でよく見かける顔だった。帰りの電車でバッタリ会うとは大した偶然だ。

ただし、しばらく地下鉄に揺らされてると、男の中で少しばかりパラノイアが芽生える。

ただの偶然か?いや、それはきっと違う。

あとをつけられたか?

降りたら何をされるか分からない。

こいつは誰だろう。

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