12.31.2017

思いもしなかったギフト

5、6年前に叔父が亡くなった。唯一連絡のつく親族だった自分が葬儀から遺品の整理までやることになり、とにかく大変だった記憶がある。叔父は私が子供の頃からよく遊んでくれたものの、どうやら他の親戚とは合わなかったようだ。噂では過去に金の揉め事があったらしい。

亡くなったときに一番困ったのは遺品の整理、それも本。とんでもない読書家だった叔父は部屋一つ埋まるほどの本や雑誌を残していった。燃えるゴミに出すのも忍びなく、いらないものはタダで恨みっこなしと街の古本屋に出張で家まで来てもらった。貴重な本が何冊かあったようで、思いのほか高い値段で引き取ってもらえた。おまけに、古本屋で使える商品券を5万円分も出してくれた。

本で困ってた矢先に、最初はそんな商品券みたくもなかったが、もったいないといえばもったいない。5万円を使って一年分の読書量を仕入れるつもりで本を買いあさった。一年かけてその本を読み終えると再び古本屋に買い取ってもらい、その翌年の軍資金が少しまた入ってくる。最初の5万円が翌年5,000円の買取りとなり、そのまた翌年は3,000円、というように金額が減っていった。

今年の買取額はとうとう1,000円を割り、買えるのはせいぜい小説2, 3本だろうか。慎重に選ばなければいけない気がする。

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今年はこれでおしまいです。
読んでくれた方、今年もありがとうございました。

穏やかな新年をお迎えください。

ヒナミケイスケ

12.21.2017

インスピレーション

寒波が都会を包み、ぐっと寒くなった。ただでさえ出かけるのを躊躇する寒さなのに、繁華街のビル風が追い打ちをかけてくる。新宿駅の東口を出て、立ち止まって空を仰ぐ男の姿がある。

山本祐一31才独身会社員、本日クリスマスショッピングのラストチャンスだ。プレゼントを贈りたい相手は田中聡美28才フリーランス通訳、付き合い始めてからわずか3週間でクリスマスイブのデートの約束をしてしまった。ひとりぼっちのクリスマスと比べて幸運なのだろうが、本人にとってこの瞬間は紛れもないピンチだ。制限時間、おおよそ2時間後。

いきなり指輪とか高価なものは論外だ、だが、特別感は出したい。純粋に喜んでもらいたいので彼女の趣味や特徴に上手く乗っかりたい、だが、情報不足、趣味は海外旅行と外食と言われている。自分のセンスもアピールしたい。乏しいながらも、センスが勝負処だ。

ベクトルやパラメータはきちんと整理して挑んだはずなのに、山本は帰りの電車で頭を抱えている。

いったいなぜ、招き猫なんか買ってしまったのだろう。