3.16.2022

おかしな休日

早乙女早苗、女25才フリーター。
現在サービス業勤務。

アクティブだが一人が好き。出かけるのは好きだが人混みが苦手。

火曜日の昼間だった。平日の休日はいいもので、映画にいこうと思い立った。案の定映画館はガラガラで、席は選び放題だった。早苗は真ん中の席を好まないタチで、後方端っこの席が一番落ち着く。券売機に表示された席表でも、誰も近くにいない。

席について上映を待った。まばらに他の客も入ってくるが、せいぜい4、5人ていどか。

一人の客がこちらの席に向かってきた。

なんだ、近くに人が来るのか。害はないが、少し残念に思う。

何食わぬ顔で隣の席に座ってきた。

え…。

40代の男か。メガネ。短髪。キレイ目な格好。ニューバランスのスニーカー。

いや、なぜ。

小さな荷物を膝に乗せて正面を向いている。言動は何一つおかしくない。広い映画館で早苗の隣の席を選んだこと以外には、だ。

上映のブザーが鳴り、照明がゆっくりおちる。

映画に全く集中できなさそうだ。