1.24.2019

働き方改革

鈴木靖夫、27才独身。時は2573年。

システム系の派遣社員、副業で宇宙人への外交官をつとめている。子供の頃の夢はゲーム開発者だったが、近からず遠からずの職につけた。これといった夢はないが安定しているので良しとしている。

500年前と比べて世の中はとりわけ変わっていない。唯一あるとすれば宇宙人との交流が増えた。人類がこの宇宙で孤独でなかった発見は当時世の中を震わしたが、実は現在ざっと2,000以上の地球外文明が発見されている。発見、されているし、交流、もするのだが、いまひとつ深い関係性は成立していない。まず物理的な距離が遠く、最寄りのサフラン文明で500光年といわれている。お互い星を訪問する金と技術と時間を考えれば割りに合わず、用件もなければ交流するきっかけがまずないのだ。

そうとはいっても数百年毎になんらか正常な国交の示しを最低限記録するべきということで、政府はアルバイトベースで外交官を募集した。鈴木の大事な副収入となったわけである。応募資格は15歳以上で逮捕歴がないことだけだが、20年に一度に外交状況の報告が求められる。大概は記入欄に「以上なし」で十分で、おそらく提出を受ける役所でも読んでる人はほとんどいない。

これだけで毎年85万円もらえるのはなかなか美味しい話だ。