8.14.2022

ロールキャベツ

「今夜はあなたの好物を作ったわ」

家に帰ると妻が言う。私たちは共働きなので、普通の平日に妻が食事を準備してくれることはただでさえ珍しい。

嬉しそうにいうので、驚きすぎて水を差すのもどうかと思い、私は笑顔でありがとうと返した。それで、俺の好物ってなんだっけ、と。

妻は大袈裟に肩を下げ、がっかりしてみせた。

ロールキャベツよ、ロールキャベツ。
作るの大変だったんだから。

私は内心ポカンとしてしまった。妻に悪いが、とりわけロールキャベツに思い入れはない。最後に食べた記憶すらない。

それなのに、いつ妻が私の好物として認識するようになり、なぜわざわざ今日こしらえてくれたのだろう。笑顔を保ちながら、頭の中はハテナマークしか浮かばなかった。

ロールキャベツは美味しかったので、これからはロールキャベツ好きとして生きていこうと思っている。