7.19.2022

あせり

朝倉博己、31才独身男。
2025年のこと。

さきほど大地震があった。チェロの稽古のため横浜に来ていたんだが、早く着いたので喫茶店でまったりしていた。揺れが大きく、陶器類の入った棚ごと倒れてがしゃんと音がした。喫茶店の小さなテーブルの下に潜り込もうとする客、外に逃げようとする従業員、逆にガラスシャッターから離れて店の奥に避難しようとする店長。私はというと、馬鹿みたいにテーブルの両端を手で掴んで硬直してしまった。

30秒、いや一分近く揺れただろうか。一旦揺れが止まったところで、色んな考えが頭をよぎった。

帰れるのかな、電車は止まってるか

彼女や身内は大丈夫か

つなみ?あ、海が近い

財布はある、現金はすこしあったか

明日会社あるのかな

電車ダメならタクシーはつかまるだろうか

2011年のときはどうしたっけ

チェロ背負って東京まで歩くのはムリだ

電話、しなきゃ

スマホでヤフーを開く。震度7、福島県、津波にちゅうい。情報は少ないがスマホの中の世界が正常に存在していることに、妙に関心というか、ほっとする。

2011年の地震直後、小さな会社だったがみんな会議室のテレビニュースをみていて、上司がぼんやり「世の中変わるな」と言ったのを覚えている。今回もそうだろう。

何かしなきゃ。