2.04.2023

二次災害

佐渡拓也、37歳公務員。
身長169cm、体重81kg。

寒い日が続く。佐渡はとても寒がりなので、この時期の通勤が億劫だ。毎朝アパートから駅までの十分ほどの距離をしのぐため、厚着とニット帽と手袋とホッカイロを欠かさない。

ある2月の火曜日の朝、佐渡はいつもどおり震えながら地下鉄の駅に辿り着いた。

都内でも古い駅で、地下に下る階段の幅が非常に狭い。登る側と下る側の人の肩は触れるし、良く渋滞する。ましてや佐渡の大きな体型だとボトルネックでしかない。絵に描いたような肩身狭い思いだった。

階段を半分ほど下ったところで転倒してしまった。厚着のため足元が良く見えず、両手はダウンコートのポケットにつっこんだまま、真っ逆さまだった。幸いか不幸か、自分の前には誰もおらず他人を巻き込むことはなかった。

雪だるまのように転げ落ちながら、登り側の人が壁にしがみつく様子が横目で見えた。二次災害を避けるため当たり前の行動だが、少し切なく感じるのだった。