12.22.2013

僕の好きな場所

沼肩宏、34才。

半年ほど眠れない日が続いている。日中はふわぁっと夢の中にいるような感覚でいるが、夜になったとたんに昼間のだるさが嘘のように消え、目も頭もすっかり冴えてしまう。冗談のようにあべこべな生活リズムで心身疲れていた。

ある冬の夜、仕事が遅くなり最終便のバスで帰ることになった。駅から自宅までの道程は一時間ほど。他に乗客がいないので次々と停留所を通過する。ピンポーン、ピンポーンとベルが鳴り、通過します、通過しますと女性の声のアナウンスがながれる。シートのしたからのぼる熱気とバスの揺れで、沼肩はすっかり眠ってしまった。

目が覚めるとバスは止まっていた。寒い。暗闇のなか、手探りでドアをあけて外に出る。少しずつ目が慣れてきた。他にもたくさんのバスが並んでいる。

このバスの終点、どこだったっけ。街灯も少なく、数十メートル先も見えない。夜風が薄いビジネスコートをすり抜けて身体を震わせる。どうやって帰ればいいのだろうか。ふと腕時計をみると午前3時、夜明けまで大分ある。

沼肩はバスに戻ることにした。最後列の席でコートを羽織り、膝をかかえて目をつぶることにした。

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今年のfelling the titanはこれで閉店します。来年もよろしくお願いします。

みなさまの冬休みが穏やかでありますよう祈っております。

ヒナミケイスケでした。