1.30.2011

ちゃんと考えたい

娘の名前は明美という。今年27才になる。名前の由来は、生まれた時間がちょうど夜明けだったので、その朝焼けを見たときに思いついた名前だった。

いま、彼女は私に腹をたてている。この一時間ほど、手洗いに閉じこもったまま、大泣きをしている。時折、クソオヤジ、馬鹿、キモイ、など、ドアの向こうから聞こえてくる。実は、今日は明美の結婚式なのだ。とても、困っている。

さきほど控え室で、お父さんは、会社の人以外でどんな人を招待したの?そんな話をしていた。私の大学時代の同級生に、娘と同じ名前の明美ちゃんと言う女性がいる。いまでも仲が良く、たまたま仕事の付き合いもあって披露宴会場にも来ている。

娘は笑いながら、まさか、昔の彼女とかじゃないよね?とちゃかしてきた。

まあ、ほんの一瞬な、と正直にいった。これが間違いだった。

…お父さん、それ、本気で言ってるの?娘の表情が険しくなった。…まじめに気持ち悪い。

たしかに、妻にも話したことのない話だった。隠していたつもりもないし、あまりにも昔のことなので気にしてもいなかった。

1.24.2011

ランダムウオーク

たどり着いたウエブサイトは知らない人の日記。風邪をひいた日の話だったり、携帯電話を買った日、甥っ子が生まれた日、足をのばして都会にでかけた日。投稿者のことは詳しく書いていない。ハンドルネームはカズとなっている。

内容は平凡そのものだが、気持ち悪いのは記事の日付だ。たとえば、携帯電話を買ったのが1968年6月3日となっている。甥が生まれたのが2012年1月31日になっている。六本木ヒルズに遊びにいったのが1986年9月13日。その翌日は風邪をひいており、鳥インフルエンザかなぁ、と悩んでいる様子。

ここまでデタラメが淡々と続くとさすがに気味が悪い。いけないものを読んでる気がしてどうも居心地が悪い。

1.15.2011

聞き手、囚人

クッフ船長は、それは人望の厚い人物である。それも、ここらでは有名な海賊団「スナックでの一恋」を率いる権力者である。おおよそ百人の悪党および見習いを乗せた海賊船「かなこ」を上手く仕切らなければいけないのだから、並大抵のカリスマではまかないきれない仕事だ。

実はというと、クッフ船長はいわゆるプロパーではない。かなこの船長に就任してから実に22年間経つが、それ以前は経営コンサルティング会社で8年間働いていた。スナ恋の創設者で前船長の溝口公康が前線からはなれる時期のことだったが、本人の強い要望で後継者は外部から招聘されることになっていた。プロパーからは多少、不平不満の声もあったが、皆心の底では前船長の決断に納得していた。当たり前のことだが海賊というのは根っからの傭兵である。実益には貪欲だが、権力には興味がない。組織への束縛ももってのほか。そこで、結果、クッフが来たということだ。スナックでの一恋は、前船長の賢明な発想によりいまでも続いている。

クッフは話す。はじめから、別に海賊への憧れはなかったんです。部活と趣味でヨットをやってたものだから、いずれは海にかかわる仕事に就きたくて。でも、いまはすごく充実してるんです。海賊業って本当に小さなことの積み上げで成り立ってるもので、もの凄く難しい。強盗、恐喝、強姦、殺人、どれ一つ欠けてもいけない。全部できてはじめて海賊なんで。深いです、深い。海だけに(笑)