視界
森川ハジメ、32才会社員。
転職をきっかけに、アクセスの良いベッドタウンのマンションに引っ越した。立地は便利だったが、人の気配が案外少ないものでさびしい生活であった。
ベランダから見渡す限り、他のマンションが視界を埋め尽くしていた。ぼんやり眺めていたら、あることに気がついた。
向かいのマンションの4階と5階の居間がそれぞれ、上下重なった様子が視界におさまっていた。同じ位置にソファとテレビが置いてあった。ほぼ同じ観葉植物、同じ壁時計。似た具合に薄毛の中年男性の後頭部がソファから生えているようだ。
上下階同士で答え合わせすることなんて生涯ないことだろうと思い、森川は根拠もない優越感にひたった。
次に違うマンションに目を向けると、知らない人と視線が鉢合わせした。
転職をきっかけに、アクセスの良いベッドタウンのマンションに引っ越した。立地は便利だったが、人の気配が案外少ないものでさびしい生活であった。
ベランダから見渡す限り、他のマンションが視界を埋め尽くしていた。ぼんやり眺めていたら、あることに気がついた。
向かいのマンションの4階と5階の居間がそれぞれ、上下重なった様子が視界におさまっていた。同じ位置にソファとテレビが置いてあった。ほぼ同じ観葉植物、同じ壁時計。似た具合に薄毛の中年男性の後頭部がソファから生えているようだ。
上下階同士で答え合わせすることなんて生涯ないことだろうと思い、森川は根拠もない優越感にひたった。
次に違うマンションに目を向けると、知らない人と視線が鉢合わせした。
コメント0archive
Post a Comment
<< Home