8.07.2021

怖くて悲しい

私は笹本タケル31才。

悪趣味だが怖い話やオカルトが好きで、怪談話や心霊スポットめぐりで気分が盛り上がる。今年の夏も暑い。少し足を伸ばして他県で「出る」噂のトンネルをたずねることにした。

地元のコンビニ駐車場を出発したのは夜の22時ごろ、そこから2時間ほど運転して問題のトンネルを通過することになる。昭和初期に出来た古いトンネルで、建設する際に山神を祀るほこらをつぶしてしまったらしい。多くの作業員が生き埋めになってその地縛霊が今でも顔を出すとか、祟った天狗が直接いたずらを仕掛けてくるとか、霊に出くわしたカップルが事故死してはたまた霊になって現れるとか、伝説は後を経たない。

予定通り0時にトンネルに着いた。見渡す限り両側の車線に通行車はない。運転するワンボックスをトンネル内部の道路脇によせて、よしいくぞ、と下車して歩き始めた。トンネル内の照明が薄暗く、懐中電灯を頼りに道を照らした。

ふと振り向くと

友人がいなかった

オカルトに没頭するようになってから、私の交友関係は自然消滅していっていた。遊びが時代遅れなのか、気色悪いためなのか身内や友人がみるみると私の前から姿を消していったのだった。

涙を流しながら一人で車に戻って帰路に着いた。

明日からプラモデルでも始めようと思う。