10.25.2013

とある愛の話

若タヌキの亮介はいたずらが大好きで、いつも子ダヌキを泣かせたり大人ダヌキを騙したりして遊んでいた。ある日のこと、いつも以上に悪さの虫がなくので、亮介はキツネに化けてキツネの村に忍び込んだ。

今回は誰もが驚くようなことをしでかしたいが、何かといって思いつかないので、亮介はキツネの姿のまましばらくキツネ村に居座ることにした。キツネと過ごし、キツネと飯を食べ、キツネと働きキツネと遊んだ。一月が一夏へ、一夏が一年、一年が十年となった。やがてキツネの娘と恋に落ちキツネの夫になることになった。

キツネの娘にはタヌキであることを内緒にしていたが、キツネにしろタヌキのにしろ同じ化け類だし、いや、化けてなんぼのものだと亮介は考えた。女ダヌキも女ギツネも、部分化けで小じわを隠したり、大胆な者は顔ごと化けてる。その延長で身体を化かして生きていて何が悪いのだ。亮介は心からキツネになり切ることを誓った。

それから更に年月が過ぎ、亮介とキツネの娘は、古ギツネの夫婦となった。亮介は自分への誓いを守り抜き、毎日の油揚げのおかずにも文句一つ言わなかった。

今タヌキの姿に戻り、タヌキの村にもどったとしたらどんな顔をされるだろうか、と時々想像して楽しむ亮介なのだった。