5.26.2014

醤油を借りにあの世へ

自宅の近くに有名な火葬場兼斎場があります。街に花屋は多いし、礼服を着た人もよく見かけます。さきほどインターネットで調べたらたくさんの著名人もここで火葬されているようです。

駅近くのドトール。仲間を見送ってから、場所を変えて思い出話に花を咲かせるじいさんばあさんたち。その傍ら今日はポカポカ良い天気、呑気な白昼夢をみる35才男ヒナミケイスケです。

それぞれの死に、それぞれ掛け替えのない悲しみと神秘があると思います。それは十分認識しながらも、この国において死はより身近で、より日常的なことになっていくことは間違いないでしょう。

でもそれは遠い未来のことじゃないんだなと、ふと思い、何故だかホッとしたのでした。

5.13.2014

片付けません

みっともないが部屋が散らかっている。掃除はしているので不潔じゃないが、数日経たないうちに本や書き物、筆記道具、楽器、譜面があちこちに散らばってしまう。特にひどいのが寝床、机、居間のテーブル。

色んなことを同時並行で進めるからこうなる。少し楽器を練習しては中断、書き物、それを中断して本を読み、昼寝、また楽器…とまあ想像はつくと思う。よほどのことがない限り一つの作業に集中できない。途中段階のものを片付けることに、濡れた洗濯物をしまう気持ち悪さを感じてしまう。

生物学的に、生命はアンバランスによって維持されていると学んだことがある。酸素の足りないところが常にあるから心臓はバクバク働いてるのであって。バツが悪いが、そんな感覚もあるので無理に部屋を片付けることはしない。

5.07.2014

尾てい骨の怪我

昔好きな女性がいた。名前は「川原翔子」という。今はもう会っていない。15年前に出会って、10年前に会わなくなった。マイナス15からマイナス10を足してマイナス5。私も諦めがついてきたのか前ほど翔子のことを想わなくなった。きっと健全なことなのだろう。

先日、仕事で新しい取引先と名刺交換をしたとき、担当者の若手男性の名前が「河原翔」だと知った。あっ、と心の中で翔子の名前が思い浮かんだ。偶然のレベルにも達しない下らない出来事である。そもそも川の字が違うし、よく考えれば全部よくある文字だ。ところが、心はいい気味とばかりに、あるはずもない河原翔と川原翔子の共通点を探らせるのだった。

心は時にまったく迷惑なやつだと感じた。

5.05.2014

課長だって辛い

俺の名前は等々力ツヨシ、26才。ヒーロー名は電子ジャー(グリーン)、特殊能力は主に瞬間移動、怪力、透視。本名がレッドっぽいと同僚からよくからかわれるのだが、性格が内気なため本部判断でグリーン役に回されたのも無理がないと思っている。

前置きが長くなったが、いま私は現場の真っ只中だ。正義側は私一人(変身済み)、悪党側はチンピラ一人(変身能力なし)、被害者はカワイコちゃん一人(推定89/60/93)。カワイコちゃんはチンピラにナイフをクビにつけられており、間の距離はざっと5メートルだろう。

さほど難しいシチュエーションではない。悪党側と力の差があるので、まず自分の安全は確保されている。となるといかに被害者を華麗に無傷で救い出し、後ほどデートに持ち込むかが課題である。一般的な対処方として、瞬間移動で悪党の背後に回り込む➡︎ナイフを持つ腕を封じる➡︎被害者を安全な位置に突き放す➡︎悪党をぼこる、という段取りがまず思い浮かぶが、運びとしては早すぎ、雑、地味すぎる。カワイコちゃんへのアピール度も低く、後のデートの確率も危うい。デートがないとなると、放送時間残り五分間のドラマに穴が空いてしまう。一生懸命悪さをしているチンピラに対しても薄情というものだろう。

というわけで、面倒ではあるが説得からはじめるのがお約束だ。「バカな真似はやめろ!」「うるせー、この娘の命が惜しければその洗米バスターの電源を切れ!」「なに(汗)!今夜の夕飯はどうなるんだ…」「ふはは、さすがの電子ジャーも怖気ついたか。」

という調子の駆け引きで2、3分。敵が巨大化しないパターンなのでもう少し長引かせてもいいのだが、ソロ活動で盛り上がり過ぎてもなんなのでここら辺で勝負をつけることにする。透視能力を使い「やい悪党!娘の下着の上下の色がベージュとグレーとバラバラだ!」「なーにー」「でゃあ〜」。ぶん投げた洗米バスターがチンピラの膝に直撃する。すかさず正面からえい、とう、とチンピラをぼこる。

我ながら出来のいい回だったが、娘はその足でブルーとのデートにいってしまった。五人組はもう卒業しよう…。