7.27.2007

業務連絡:ライブとCD

8月3日(金)の夜、西荻窪のturningでライブをすることになりました。こんなゴールデンな日に出してもらって本当にいいのかしらと思いつつ、張り切ってこーと思います。出演が何時ごろになるのかはっきり分かりませんが、20時以降になると思います。今回は新曲をやる勇気が沸くかしら?ご都合よろしければ、是非遊びに来てください。

8月3日(金)
nishiogi turning
http://www.turning-promotion.co.jp/tng/index.html

開場で次のCDを配ります。是非、もらっていってください。郵送をご希望の方はメールでお名前と住所を送っていただければ、無料で一枚お届けします。今回は暗い曲になりました。



the hinsi etude by cayske hinami
"now is the time to be timid"

1. large gentle creatures

7.26.2007

あたしは大丈夫なの

自惚れてるとは思われたくないの。
でも、多分あたし、外見的にはブスじゃないわ。
何とも思わなかったのよ、最初は。

ロータリーのバス乗り場で、彼はとても気まずそうに声をかけてきたわ。すいません、200円貸してくれませんかって。どうしても急ぎで帰らなくちゃいけないのに、財布落としちゃって。必ず返しますので、お願いしますって。たかが200円であんなに頭下げられちゃってもね、でも、本当に困ってそうだったから、あたし、彼に200円あげたわ。

新手のナンパかしら、なんて思ってみたりもしたけど。彼は私の隣のつり革だったんだけど、ナンパにしてはずーっと黙ってるのよね。もしかして、ナンパがヘタクソなだけだったのかもしれないけど。目が合うと、ふっとうつむいちゃったりして。悪い男じゃなかったわ。20代だと思うけど、仕事はちゃんとしてる雰囲気ね。洋服はきちんとしてるし、髪の毛も清潔だった。あら、よく見るとちょっとだけ染めてるのね。ミントでも噛んでるみたい。良いところのお坊ちゃまかしら。

五つ目のバス停が、彼の降りるところだったの。もしよろしければ、一緒に降りてもらえれば家はすぐなんで、今すぐ返しますって。早口だったものだから、200円ごときいいわよ、なんて言い出せなかったの、あたし。ついつい、ついて行っちゃった。ダメよね、知らない人について行っちゃったら。でも、家に入らなければいいわよね。家は普通のマンションだったわ。別にガッカリなんかしてないけど。誘われると思ったけど、オートロックの外で待ってて下さいって。とても紳士だったわ。ちょっと経つと財布を持ってエレベータを降りてきたわ。

「すいません、あぁ、財布、家にありました。ご迷惑おかけました。」

「ううん、いいの。ウフフ。」

ちょっと、可愛かった。あたし。

そしてね、あたしバス停に戻ったら最後のバスを見逃しちゃってたの。彼のマンションに戻ってピンポンして、タクシー代1,000円借りることにしたわ。

7.25.2007

公共建設

むかしむかし、国境がない時代にイウマという大都市があった。ヘイタイ川に面して建てられた街で、遠くから人が集まる港町として商業が繁盛した。当地の経済が急激に発展していく中、その都市に住むものを羨んだり、妬む者も少なくは無かった。いつか、イウマそのものを乗っ取る野望を抱く隣国が出現するのではないか、と噂されるほどだった。

イウマの大王は住民の不安を知り、都市の周りを深い堀で囲むように命じた。都市の南側は巨大なヘイタイ川なので、残り三方面を掘る計画だった。水も川から直接ひくことが出来るので、都合良くイウマを島国として陸から分離する構想だった。建設は順調に進み、5年後には底が見えないほど深い堀が完成され、予定通りにヘイタイ川の水でいっぱいになった。

仕方がないといえばそこまでだが、イウマは以前に増して世の中から孤立した。立地の都合上、商売は問題なく続いたがイウマに対する冷たい目は変わらず、くわえてそれからはイウマ住民の外の世界に対するパラノイアが深まるばかりだった。困った大王は、住民の声が上がる都度に堀の幅を広げるように命じていくしかなかった。

もはや堀とヘイタイ川の区別がつかないほどの状態となった。かつて設置されていた陸橋はなくなり、イウマに通うものは全て船で行かざるを得なかった。それでも住民のパラノイアはとどまることを知らず、イウマは国を侵略してでも堀は広げ続けた。アトランティスもその一つだった。堀はやがて海となっていった。

イウマ島はヘイタイ洋のど真ん中にある、孤立したリゾート地に形を変えていった。

7.24.2007

池袋とイワシ

小さい頃、家族と池袋のサンシャインシティに行った記憶が残っています。今は住まいも仕事も池袋とは大分離れています。そのためか、池袋に対しては同じ東京でありながらも、キロメーターで表現できる以上の距離を感じてしまっています。

自分は忘れがちですが、「サンシャイン60」は当時は日本一の高層ビルでしたね。サンシャインシティに連れてってやるぞといわれ、「よく分からんけどとにかく高いぞ」という漠然とした期待に浮かれていたのを覚えています。「サンシャインシティ」なんて言葉の意味も知らなかったし、その分ネーミングのムダの長さ、何ともいえないゴロの悪さ、不可能な発音が僕にとっては奇妙極まりない印象を残しました。ちょうど同じ時期に下のような、キン肉マンの悪魔超人がまぎらわしくも登場するものだから、私の幼い脳みそはいっぱいいっぱいだったはずです。変身するのか・・・と。でも、その中にある展望台やプラネタリウムは私の期待を裏切ることなく、私はサンシャインシティをとても気に入りました。中でも好きだったのは別館最上階の国際水族館でした。


"サンシャイン"
名前の由来もサンシャイン60といわれているそうです。


水族館の入り口には大きな筒状のイワシの水槽があります。中ではひたすらイワシの群が回っています。時計回りだったっけ。そこに顔をベタっとつけて一つのイワシに目をつけて一周するのを追っていけるか何度も何度もチャレンジしたのですが、毎回見失ってしまいます。気づけば家族はイワシの水槽を後にし、順路をたどってデンキウナギの方に進んでいました。

去年だったか一昨年だったか忘れてしまいましたが、自分の家族もサンシャインに連れて行きました。半ば、ただ自分の思い出の場所にもう一度行きたかった気持ちもありました。うれしいことに、イワシの水槽もまだありました。20年以上も、グルグル回っていたのです。うれしいことに、子供もイワシの水槽に興味を持ってくれました。つかの間でしたが。

イワシは生まれてから2年で成魚となり、約8年間の寿命といわれています。20年も経つと、水槽の中の人口(漁口?)が完全に入れ替わっていることになります。四六時中グルグル回っていて、よくぞ繁殖するヒマを作ったもんだと関心してしまいました。それとも、水槽の外から調達されてきたのか。

7.22.2007

こしあんが好きだ

二人のサムライが口論していた。二人ともサムライとはいえ、格下ランクのサムライであり限りなく庶民に近いものだった。その品の無さは口論の内容からして明白だった。

なにしろ、最後に残った大福を争っていたのだから。

俺はまだ二つしか食べていない。貴様はもう三つも食べただろう。最後の大福は明らかに俺のものだ。文句があるか。

折半すればいいという世の中ではあるまい、この時代遅れめ。俺は貴様よりはるかに力仕事が多い。しかも、俺はお前より身体も大きいのだし、お前の倍以上食べて何がおかしい。

図体デカいだけのボンクラめ。

なにを。

とまぁ、二人はとうとう刀を抜いてしまったのだった。ただ、ジリジリにらみ合うだけでお互い踏み込もうとしない。なにしろ、二人とも人を切ったことは一度もなかった。最初に集まってきたギャラリーも、いささか飽きがきてしまい、やがてヤジまで飛ぶようになってしまった。

なんでぃ、この腰抜けサムライどもが。
どっちでもいいから早く切れ。
日が暮れちまう。

二人は場所を移ることにした。
権兵衛のじいさんの裏山に行った。

人目の届かないところで、二人は刀をさやにしまった。
もう、やめようか。
ああ、やめよう。

実にくだらないことで争ってしまった。
そうだ、実にくだらない。

切ってもやってもいいんだがな。
俺もだ。目隠し手してでも貴様ごとき。

仇が面倒だからな。
そうだ、仇が。

今日はこれくらいで許してやる。
貴様とは二度と大福など食うものか。

7.19.2007

良し悪し足、靴苦痛

本か何かで読んで、騙されたと思ってジョギングをはじめてから、しばらく経ちます。

私は、決して早く走れるわけでもなく、そして長い距離も走れません。皇居周りで見かける美女たちの華麗さもなく、ムサいのが一匹下向いてゼーハーしながら夜道をドシドシ突進してるのがお約束の体制です。そして正直に言ってしまえば、走ってるときは全然、楽しくなんかないです。公園の景色は基本的に気を紛らわすために存在し、江東区が誇る数々の橋は大小問わず憎い「ミニ丘」のほかなんでもありません。走ってるときはゴールまでの距離、すなわちいつ止まることができるのか、そんな後ろ向きな発想しか思い浮かびません。マメできるし。終わった瞬間だけはうれしいけど。

そんな中、ジョギングをやめられない理由は、少しは健康になったかもしれないので敢えて後退するのがイヤであることと、一日分燃焼したということで罪悪感なしでよく眠れるようになったことです。前向きな理由は強いていえば、長くやれば少しはお歌の呼吸が伸びるかもしれないという淡い希望と、長くやれば少しはモテたりしないかなぁ、といういわば下心です。長生きすれば、何か現状以上に言い事あるかもしれない。そんなわけで、当面はジョギングを続けるのだと思います。

ただひとつ、とても勉強になったことがあります。
私は走ることに対して大きな勘違いをしていたことに気づきました。

当初は、走っていればそのうち「苦」が「楽」になると思っていました。身体は何かと丈夫になっていくはずですし、確かに自分でも分かるくらい走れる距離やスピードは大分改善したと思います。でも、不思議なことにいくら走っても「苦」が一向に改善しないのです。はじめて走った5キロの苦痛と、今走る5キロの苦痛は同じです。身体は一定の距離を一定のペースで走る能力を自覚しはじめましたが、同じ痛みを感じ続けるのはあくまでも自分の未熟な心なのだと気づきました。

「出来る子」と「やりたくない子」が同居しているようです。

それさえ分かってしまえば、ね。やりようが色々あります。痛みは痛み、死にゃせんってね。もしかして有名なマラソンランナーでも、尋常でない身体能力を身につけていながらも、私と同じ痛みを感じているのかもしれません。

痛くないわけ、無いわけで。ん?

7.16.2007

足をもぎ取られる痛み

虫たちにとっては大忙しの季節だ。そんな、ある真夏の夜の酒の席でかわされた他愛ない会話。働き盛りのムカデどんと、バッタどんは職場仲間で、帰り道のスナックで一杯していくことにしたのだった。夜が更けていくにつれて、二匹は気持ちよく酒に酔っていった。

テントムシのママはとっくに奥の部屋に引っ込んで寝ている。ママを起こさないようにヒソヒソ、夜明け前の最後のバーボンをすすりながら話していた。

「バッタどん、先週は本当にまいったことがあってさ。田中のじじぃの庭、ほら、あの盆栽がたくさんあるところ、植木鉢に足がはさまっちゃって56と58本目の足、もぎとられちゃってさ。死ぬかと思ったさ。」

「それは、ムカデどん、気の毒だな。でも、奇遇だ。俺も先週、山本のババァの庭で、ババァの孫の虫網につかまっちゃってさ。」

「そりゃあ、大変だなぁ。よく無事に帰ってこられたもんだ。」

「クソガキにさぁ、右の後ろ足もぎとられちゃって。ほら、今、義足。」

「へぇー。よくできてるな。言われなかったら全然気づかなかったよ。でも、バッタどんにとってはとんだ災難だな。何しろ、バッタどんの自慢の後ろ足だもんあ。俺はたくさんあるから、2本なくなろうと、バッタどんにくらべれば屁でもないわ。」

「いやぁ、もぎ取られる痛みはきっといっしょだよ。」

7.08.2007

オートロックの向こう

ドアチャイムが鳴り、私は受話器を手に取った。
オートロックのモニターが起動し、訪問者の顔が画面に映る。

井上源太郎さんのお宅ですか。どなたですか、と私は答えた。私は慎重な性格だ。最近物騒なものだから、オートロックのあるマンションに住むことにしたのもある。訪問者は言う。私は井上正太郎といいます。突然で、しかも信じがたい話ですが私はあなたの弟です。あなたが40年前家を飛び出た後、私たちの父親が再婚し、私が生まれたのです。長い間、あなたのことを探していました。話すことが沢山ありますので、どうか入れてもらえませんでしょうか。

それは、正太郎さん。確かに、突然そういわれてもすぐには信じられません。失礼かもしれませんが、私にとって初対面であるあなたはただの変質者かもしれません。本当に私の弟ならば、何かそれを証明するものはありますか?

源太郎さん、あなたが私を疑うのは無理もありません。いくら弟だといっても、その言葉だけでは見知らぬモノを自宅に入れる理由にはなりません。ただ、困ったことに私には戸籍謄本も免許証も何もありません。これでは、せっかくあなたを見つけることができたのに一度も顔を見ずに帰ることになってしまう。もしよろしければ、あなたがここまで出てきてはいかがでしょうか?

いや、そうともいかない。あなたは私をおびき出して殺そうとしているかもしれない。

困りましたね。

困ったことだ。

父は元気です。

それは、よかった。正太郎さんは、家族はいるのですか?

ええ、最近二人目が生まれました。

それは、よかった。うちは去年一人目が生まれたばかりだ。

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追伸

明日から木曜日まで出張のためお休みです。
メールなど返信できない状態ですので、ご了承下さい。

ヒケ
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追々伸

今日、我が家の最寄駅の入り口を通り過ぎたときの写真です。
私の街は良い感じです。

7.02.2007

業務連絡:ライブとCD

7月14日(土)の夜、西荻窪のturningでライブをします。東京のモロ左側でライブをするのは、もしかして久しぶりかも。とても楽しみにしています。是非遊びにいらしてください。

7月14日(土)
nishiogi turning
http://www.turning-promotion.co.jp/tng/index.html

開場で次のCDを配ります。是非、聴いて見てください。郵送をご希望の方はメールでお名前と住所を送っていただければ、無料で一枚お届けします。よろしくお願いいたします。今回の作品の表紙は、ドラムのナカジが描いてくれました。1曲目も、彼と一緒に作ったものです。あとの2曲は、何かとこの絵をおかずにしてできたものです。




the hinsi etude by cayske hinami and ryuichi nakajima
"mister moan and his golden hope"

1. the almighty newborn
2. gracious in your defeat
3. will's final testament

7.01.2007

ティーピーオーを守れない

私はアイスキャンデーを無事に買うことができた。店の中はクーラーが効いているためか、外の暑さを一時忘れそうになったり、あわやポテトチップスに手を出しそうにもなったが、無事に店を出ることができた。帰ってからアイスキャンデーを食べることにした。買ったばかりのアイスキャンデーより、ほんのちょっとだけ溶けはじめたアイスキャンデーの方が美味いのだ。家についたころがちょうど食べごろだろう。足早に歩く。

ガタン。エレベータが止まってしまった。ああ、こういうときに限って。

ところが、ただの停電ではないようだ。外から色んな音が聞こえる。人の叫び声、サイレン、爆発に銃声、そして、沈黙。世の終わりか。手が震える。私は、このエレベータから無事に出ることができるのだろうか。どうやって、生き延びよう。食料は、水は。武器は。

食料は。ビニール袋のアイスキャンデーを思い出す。

今、食べるべきか。いや、助けがいつ来るか分からないというのに、もたもたしてアイスキャンデーが溶けるのを見過ごすのはあまりにも間抜けだ。いや、街がどういう状況になったかも分からないのに、大の男がのんきにアイスキャンデーを食べてる場合か。あぁ、なぜ私はポテトチップスを買わなかったのだ。

誰も見ていないので、私はエレベーターの中で、アイスキャンデーを食べることにした。