8.31.2007

心臓をかばう手

多く語られることのないことがあります。人類のはじまり以来、 我々の身体には致命的な弱点があることは、みなさんご存知でしょうか。いえいえ、そこではありません。男の子にも、女の子にもあるものですから。

「背中」です。

目も耳も鼻も届かないところにありますから、もしも誰かがあなたのことを本気で傷つけたいと思うのなら、その人はあなたの背後から攻撃をしかけてくることでしょう。スキだらけなものですから、その際あなたはきっと自分の身を守る体制をつくれないまま、すんなりやられてしまうことでしょう。

あまりにも簡単すぎることです。誰もがこのスキを利用して気に入らない人間に襲い掛かるとなると、世の中は大変なことになります。なので、私が知る限りほとんどの文化では、背後から人間に襲い掛かることは何かと「卑怯」とされていると思います。そのような行為をする者に対する刑罰の形はさまざまですが、代表的な例を挙げるならばフリーキック、などがあります。ところが、ルールや規則はおろか、「卑怯」だという価値観だけで人間の行動を縛ることは難しいことです。いくらフリーキックを被害者に与えても、何かと背後から人に襲い掛かる卑怯者は残るものです。

そこで、一部の人間はこの脅威から逃れるよう、革新的な進化を遂げました。
十人の内一人は、この進化を持つ特別な人間なのです。

その進化とは、最も背後の状況を分かりやすくした体になったことです。

目を、頭の後ろに配置しました。
襲い掛かってくる敵がばっちり見えます。

鼻も、頭の後ろに配置しました。
臭い敵がいれば、すぐ分かります。

口も、頭の後ろに配置しました。
相手を脅迫し、仲間に危険を知らせることができます。

足のつま先も、逆向きにしました。
敵を正面から立ち向かえるようになります。

本当に、いるんです。こんな人間が。
特定するのは、難しいんですけどね。

人類のほとんどは、最初はみんな右利きだったみたいです。
左手の盾で心臓をまもり、右で剣を持つわけですから。
今でも、本当はみんな右利きなのかもしれませんね。

8.29.2007

マニュアルの不備

1.その場から、はなれない

2.お巡りさんに声をかける

3.お巡りさんがいなければ、子供と一緒にいる大人に声をかける

ミッちゃんはお母さんからよく言い聞かされていたので、いざ迷子になっても焦りはしなかった。お母さんに言われたとおりにすれば、きっと大丈夫だと確信していたからだった。メリーゴーラウンドの近くだった。ミッちゃんは、メリーゴーラウンドを見失わないように気をつけながら助けてくれそうな人を探した。

15分くらい経っただろうか。

よく考えれば、遊園地にお巡りさんがいるわけがない。

ミッちゃんは、お巡りさんをあきらめ、子供と一緒にいる大人を探すことにした。背後に聞こえた。

「ママーつぎはポップコーンかって~」

これだと思い、ミッちゃんは声の方向に振り向いた。そこにいたのは親子というよりは、20代くらいのオレンジのポロシャツを着た男と、50代のワンピースを着た女性だった。何かの間違いかと思ったが、残念ながら間違いではなかった。見た目はさわやかな20代の男だが、再び口を開いた。

「ママぁ、ポップコーンん」

子供と一緒にいる大人に違いはない。あぁ、これはテレビで見たことがあるぞ。お母さんが良く見るアレだ。「こたえてください」のあの、キャラクターだ。まざこん、とかいう。でも、子供と一緒にいる大人に違いはない。

これでいいのか、とミッちゃんは一応自問しながらも、じわりじわりと女性に近づいた。近くで見ると、かなり派手な様相だ。口紅とネイルが真っ赤だ。

「あのぉ、すいません・・・かくかくしかじかで。」

「あんらぁ、大変だわネェ。それでは、迷子センターに連れてってあげるわ。こら、ヒデカズオ、あそこは触っちゃだめなのよ。このと一緒に迷子センターにいくわよ。早く来ないとあとでオモチャ買ってあげないわよ。」

「ポップコーンん」

一瞬だが、女性は男に対してギロリとにらみつけた。
男の表情から血がさーっとひいて、黙った。

「ごめんなさい」

「いいのよ。とにかく、この女の子のご両親が心配されてるでしょうから、急いで係員を探しにいくわよ。」

「ありがとうございます」

「礼儀正しい子なのねぇ~お嬢ちゃん」

8.21.2007

今の内にやっておけ

行ったことがなかったので、日曜はチビをつれて近所の銭湯へ。銭湯は良い。なにしろ広い。壁いっぱいにのどかな山の風景が描かれている。受付のおばあちゃんに裸を見られていてもなぜか恥ずかしくない。基本的には無口なおじいちゃんばかりだが、その人たちに囲まれた俺ら親子少しハードボイルドでカッコ悪くはないんじゃないか的な気分、決して悪くない。そんなタフガイ二人で一つのポカリを分けたが、こんなにいっぱい飲めたっけと少し驚く。身長は106.5センチになっていた。風呂上りの帰り道は真夏であろうとなぜか気持ちが良い。風呂入ったばかりだけど外を歩いちゃうんだもんね、な豪快な能天気さが良いのかもしれない。チビはノーパンだ。大きくなったらバラしてやろうか。いや、この秘密は墓に持ち込むとするか。

大して愛きょう振舞ってないくせにおばあちゃんに「良い子だネェ~」と褒められご機嫌のようだ。なぜご機嫌なのが分かるのかというと、最近はもっぱらママっ子であるが、抵抗なく私と手をつないでいられたことだ。こっちは手を引っ張られ放題なので、少し肩が痛い。また銭湯行こうね、とチビは偉そうに抜かす。

8.17.2007

カルテット

以下、気長に待つことにします!

クラシックのストリングカルテットをはじめたいと思っており、これからメンバーを募集します。いままでオーケストラ活動をしていて一味違う体験をしたい方(指揮者なしも楽しいですよ)、昔は弦楽器やってたけど最近音楽と疎遠になりそうな方、もちろん室内楽経験者も歓迎します。オーケストラと比べて少人数編成のため、どんなワガママ・融通でも好きに言って下さい。完全に個人同士の付き合いとなるため、会費なし、実費(練習場、譜面、交通等)は割り勘、楽器は持参でお願いしますね。年齢・技術・性別不問。

好きな楽曲をみんなで持ち寄って、笑い混じりにまじめに良い音楽を目指しませんか。個人的にはベートーベンが大好き、夢はサミュエルバーバーさんのアダジオをカルテットで実現することです。私自身は、ブランク有りですがオーケストラ・室内楽の経験はあります。運営に関しては初体験なので不慣れですが、頑張ります。私のパートは、バイオリンとヴィオラ両方可能・好きですので、定員の状況次第で決定します。昼間は家族持ちの会社員です。それでは、よろしくお願いします!

募集パート:
バイオリン、ヴィオラ、チェロ
(スタンダード編成です:V1/V2/VA/C)

練習場所:
公共施設もしくは練習スタジオを予定。
私は江東区ですが、フットワークに抵抗ありません。

練習頻度:
週末を中心に週1程度でいかがでしょうか?

演奏会:
人に聴かせたくなったらぜひやりましょう。

お問い合わせ:
hinamike@khaki.plala.or.jp
(コピー&ペーストされる方はアットマークを半角にして下さい)

8.16.2007

買わなかったぞ

革靴の底がボロボロになった。
今回は修理のしようがないくらい。
よく頑張ったぞ、俺の靴。
沢山修理して、沢山磨いてきた関係なので悔いはない。

次が決まったタイミングを持って、こいつを葬ってやろうと思っていたがヨメは一足先に処分してしまった。ここらへん、ヨメはさすがにドライだ。履き納めを逃したことが悔やまれるが、ヨメとしての立場というのもあるらしい。みっともない靴を仕事に履いていったら、家の人もみっともないと思われるらしい。言い分は分からんでもない。私もモノを捨てることに関しては、足を引きずりがちだということも自覚している。

ちょっと凹んでいるのを察したためか、ヨメは私を一人でデパートに送り出した。新しいやつ買って来なよ、と明るく言う。この間の商品券、使っていいよ、と。それは大いにありがたいことであって、本人も買う気マンマンで鼻息荒く靴売り場に挑んだわけだが、結局何も買わずに帰ってきてしまった。一時間近く色々見てみたが、購買欲がイマイチだったとしか言いようがない。そこそこトレンディなデパートだったはずなので、多分、そこにある靴ではなくて私の方に問題があったと思う。

なぜそういうことになったのか、原因はよく分からないが、紛れも無い事実としてあるのは、今現在私はスーツに合わない微妙な靴を履きながら働いており、結局、ややみっともない格好であることだ。

8.15.2007

サヨナラ星人

サヨナラ星は、地球にそっくりなところ。海も陸も緑もあるし、クリーニング屋さんだって戦争だってアメリカンジョークもある。そして、サヨナラ星に住むサヨナラ星人も、地球に住む人間とそっくりだ。男と女に分かれてるし、笑ったり泣いたりするし、都会っ子も田舎っ子も金持ちもコジキもイヤなやつもイイやつもどうでもイイやつもわんさかいるわけで。

一つだけサヨナラ星人と人間で違うのは、人間には「こんにちは」と「さようなら」があるところ、さよなら星人には「さようなら」しかない。それがどういうことかって。

サヨナラ星人が他のサヨナラ星人と会うとき、挨拶はしない。用件があって会ってるのであればそのまま用件を話すし、偶然でばったり会ったならば良くて会釈、普段なら見向きもしないですれ違う。サヨナラ星ではこれが普通。照れてるわけでもないし、お互いに失礼なことをしている意識もない。だから、サヨナラ星には「こんにちは」も、「こんばんは」も「やぁ」も「おっす」もない。

勘違いはしてほしくない。サヨナラ星人は地球の人間の基準からしても決して冷たい感じではなく、むしろとても礼儀正しくて人情のある宇宙人だ。例えば、弱いものを助けたり、美しいものを作ること、そんなことだってサヨナラ星人の文化では良い価値観とされている。

さようならの習慣は、地球の人間とほぼ同じのよう。

ただ、体感的にしか語れないことだけど、サヨナラ星人の「さようなら」の一言は地球の人間よりも、ほんの少しだけゆっくり話されるそうです。

8.12.2007

僕よりダメなやつ

こんばんは。

私は、数多いドラえもんファンの一人です。
今日はふと、昔読んだことのある一話のことを思い出しました。

タイトルは、確か「ぼくよりダメなやつがきた」。ある日、のび太のクラスに転校生がやってきました。信じがたいけれども、その子はテストの成績も、運動神経ものび太以下、そしておまけにいじめられっ子。のび太は大喜びです。いつまでも親友でいようね、一緒に0点とろうね、といいます。ところが、その子は気が進まないよう。僕だって、頑張ってたまにはテストで良い点とりたいよ、とのび太に打ち明けます。のび太は気分を悪くし、その子を突き放してしまいます、生意気だって。

そんなある日、のび太はその子がいじめられっ子に囲まれているところを目撃してしまいます。最初は放っておこうと思うけど、結局助けに行きました。ボコボコにされたけど、おかげでその子と仲直りすることができました。お話の最後では、あっけなくその子は再び転校することになってしまいます。

その話で、ドラえもんがどんな役割だったか忘れてしまいました。
まぁ思い返せば、道具でどうこう、という話ではなかったですね。

何故だか胸が苦しくなるお話です。

8.09.2007

コーヒーを守ってくれ

女はコーヒーショップに入った。

スーパーノッポのカフェ・ラテホットを低脂肪牛乳でエスプレッソダブルにバニラシロップワンショット泡なしホイップクリーム有りシナモンひとふりちょっと熱めでいれてくださる?紙コップは二重にしてちょうだい。あと、フタの飲み口にあのシール貼るのやめてくださる?

かしこまりましたスーパーノッポのカフェ・ラテホットで低脂肪牛乳エスプレッソダブルにバニラシロップワンショット泡なしホイップクリーム有りシナモンひとふりやや熱め二重コップ飲み口シールなしを、一つ、ですね?合計1,100円のお買い上げになります。ビスコッチをお付けしましょうか?

違うわ、「やや熱め」じゃなくて「ちょっと熱め」よ。気をつけてね。ビスコッチは結構だわ。

ゴールド感謝ポイントカードはお持ちでしょうか?

ないわ。

無料でお作りしますがいかがでしょうか?

そうね・・・。

申し込み用紙はこちらですが。

あら、面倒なのね。今は急いでるのでいいわ。

それでは、アンケートをお願いしてもいいですか?

急いでるの・・・。

お支払い方法は?

スイカードよ。

スイカードのご利用でしたら、ゴールド感謝ポイントカードにご登録いただきますと1.3倍のマイルが同時に溜まりますが、かなりお得になっております。そして、いまなら初回手数料が、500円のみです。あと、4周年記念キャンペーン開催中ということでIHクッキングプレートかハワイ旅行の抽選を行っております。

4周年記念って?あなたたち、10年くらい前からいるわよね?

ここの店長の次女の4歳のお誕生日が先月でして。チェーン11年記念キャンペーンは来月から開催します。ちょうど、当店人気商品ナンバー3のスーパーノッポのカフェ・ラテホット低脂肪牛乳エスプレッソダブルバニラシロップワンショット泡なしホイップクリーム有りシナモンひとふりちょっと熱めは11円オフになります。

・・・やっぱりいいわ。

またのご来店をお待ちしております。

8.07.2007

嫉妬心、ボールペン

「私はこのボールペンが好きだ。なぜなら、ガッシリした持ち応えが気持ちいいし、長く書いていてもインクが途切れないから。」

「それなら私もそのボールペンが好きだ。私はあなたのようになりたいと思うから。」

「君、それはちょっと変じゃないかな。だって、君は必ずしも私と同じように、ガッシリした持ち応えが好きとは限らない。もしかしたら、スラッとしたボールペンの方が君の手に合うんじゃないのか?そして、君は必ずしも私と同じように、長く書いていてもインクが途切れないボールペンを好むとは限らない。もしかしたら、インクが途切れたとしても繊細なラインを描けるボールペンの方が好きだったりしないのか?何事も自分の考えをしっかり持たなければ。」

「わざわざどのようなボールペンが自分に一番合っているかはどうでもいい。だって、どんなボールペンだってしばらく使っていれば慣れていくものだから。色々考えるよりも、憧れている君と同じものを使うことにしたほうが合理的だろう。君は仕事においてもとても優秀だ。君の真似をすれば私も優秀に近づけるかもしれない。」

「でも、それでは君はただの真似っこ猿だ。信じがたいが、仮にでも君が私と同じボールペンを使ってそれを原因に仕事で優秀になったとしても、それは君自身の考え、君自身の努力で優秀になるわけでない。それは、僕の手柄になってしまう。それでもいいのか?」

「それは、もともと真似をしようという発想をしたのは私なのだから、別にあなたに対して何も借りをつくったことにはならないね。依然、私は自分の考えを持って行動していることになるから。」

「気持ちが悪い。」

「それは私の知ったことではない。」

8.06.2007

ミツヤサイダーのベタつき

昨夜、マンションのベランダで妻と息子と花火をやりました。すごく煙たかったけど、楽しかった。肺に何か異物が進入したと思われる。それはさておき、たぶん、住民条約か何かの違反だったと思う。ごめんなさい。すごく楽しかったので許してください。次回はちゃんと公園でやります。夏はまだ先が長いようです。花火というのは仲直りにも効果的だと思います。喧嘩された方はコンビニで線香花火でも買って、その大事な人を公園などに呼び出してはいかがでしょうか。

先週の金曜日のライブの後、ライブハウスの入り口で見知らぬ女子が座り込んでいました。誰かを待っていたっぽい。私は他の人と立ち話をしていましたが、やたらと目が合うもので、帰り際に「お疲れ様~」ととりあえず声をかけておいた。歩きながら喋ったので、彼女の返事がよく聞えなかった。厳密に言うと、「す」しか聞き取れなかった。

す。

「す」もも?

「ス」プライト?

「好」きです付き合ってください?

人に話しかけるときは、ちゃんと止まってするべきと痛感。
今でも気になる。スプライトだったらどう答えよう。

「す」みません。

夕立が降りそうになるとお腹が少し痛くなります。
怪しい雲に湿気た空気。
もうそろそろ帰ったほうがいいね、とこぼしてしまったのです。