3.15.2018

静かに燃やす

「そう簡単に死なないって。でも死んだら後はよろしくね」夫は笑いながらいう。

「わかったから、なるべく死なない方向で頼んます」私は必ずこのように返すことにしている。

心配だけど、火事を追い回す職業なのだから仕方がない。小さな戸建、タワーマンション、ショッピングセンターなんでもござれ。一日のはじめに仕事が決まってるわけでもない。いちいち騒ぎ立ててもキリがないので、おたがい「その可能性」をそっと心の片隅に待機させるようになった。結婚して5年経つけれど、ようやく私も平穏のようなものを感じるようになった。「慣れ」の力はすごい。

夫とは幼い頃からの付き合いで。運動神経はいたって普通、学力は中の下、ずば抜けた人望や人気もあったわけでもない。

夕飯の買い出しに行かねば。今日は彼の好物のプリンが特売だ。