内緒の内緒

サチの本名は幸男と書くがユキオと読む。あだ名の由来は私の読み間違えだった。名前が男っぽくないとか、かれこれ20年間文句をたれながらサチという名前に答えてくれている。私はこいつのことが好きでたまらない。

中学時代からの付き合いである。サチは今フリーランスでデザインの仕事をしていて、私は中堅商社で自転車部品の輸入をしている。あまり頻繁に会えないけれど、年に何回は飲みに行くようにしている。

こないだ下北沢で飲んでいたとき、サチが、とある友人の悩みについて話してくれた。友人は同性愛者の女性で、めでたいことにパートナーと結ばれることになったのだという。結婚式や引っ越しはこれからなのだが、その際会社や身近な人にどうカミングアウトしていいのか分からないのだと。

この国は同性愛者に厳しい環境だと思う。法制度はおいといて、存在が今一つ認められてないように思える。テレビでいわゆるオネエキャラがもてはやされているが、ああいう雰囲気でないゲイの人からしてみれば、良い迷惑なのかも知れない。関西人が面白いと決めつけるのと似ていて。ましてやレズビアンの方はメディアにすら出ないので、肩身狭い想いをしているのではないかと想像する。

そんな話を聞いて今夜は少し泣いた。

そんなサチと手をつないで駅まで歩いた。