8.29.2007

マニュアルの不備

1.その場から、はなれない

2.お巡りさんに声をかける

3.お巡りさんがいなければ、子供と一緒にいる大人に声をかける

ミッちゃんはお母さんからよく言い聞かされていたので、いざ迷子になっても焦りはしなかった。お母さんに言われたとおりにすれば、きっと大丈夫だと確信していたからだった。メリーゴーラウンドの近くだった。ミッちゃんは、メリーゴーラウンドを見失わないように気をつけながら助けてくれそうな人を探した。

15分くらい経っただろうか。

よく考えれば、遊園地にお巡りさんがいるわけがない。

ミッちゃんは、お巡りさんをあきらめ、子供と一緒にいる大人を探すことにした。背後に聞こえた。

「ママーつぎはポップコーンかって~」

これだと思い、ミッちゃんは声の方向に振り向いた。そこにいたのは親子というよりは、20代くらいのオレンジのポロシャツを着た男と、50代のワンピースを着た女性だった。何かの間違いかと思ったが、残念ながら間違いではなかった。見た目はさわやかな20代の男だが、再び口を開いた。

「ママぁ、ポップコーンん」

子供と一緒にいる大人に違いはない。あぁ、これはテレビで見たことがあるぞ。お母さんが良く見るアレだ。「こたえてください」のあの、キャラクターだ。まざこん、とかいう。でも、子供と一緒にいる大人に違いはない。

これでいいのか、とミッちゃんは一応自問しながらも、じわりじわりと女性に近づいた。近くで見ると、かなり派手な様相だ。口紅とネイルが真っ赤だ。

「あのぉ、すいません・・・かくかくしかじかで。」

「あんらぁ、大変だわネェ。それでは、迷子センターに連れてってあげるわ。こら、ヒデカズオ、あそこは触っちゃだめなのよ。このと一緒に迷子センターにいくわよ。早く来ないとあとでオモチャ買ってあげないわよ。」

「ポップコーンん」

一瞬だが、女性は男に対してギロリとにらみつけた。
男の表情から血がさーっとひいて、黙った。

「ごめんなさい」

「いいのよ。とにかく、この女の子のご両親が心配されてるでしょうから、急いで係員を探しにいくわよ。」

「ありがとうございます」

「礼儀正しい子なのねぇ~お嬢ちゃん」

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