無重力のひと時を求めて
マジシャンは落ち着いた口調で、ハートの2のカードを客に見せてみせた。
「わぁーすごーい。」
「・・・むなしい。」
マジシャンはぼそっとその言葉を漏らした。
「お客さま、こういうのはもう飽きてきたのではないでしょうか。騙されてばっかりで、腹が立ちませんか?」
「うーん、そう改めて言われれば考えてしまうんだけど・・・。別に。」
「どうです、私と賭けをしませんか。」
「どういう賭けです?」
「好きなカードを私に教えてください。」
「それじゃあ、スペードの7。」
「私はこれから目隠しをします。そして、カードを束ごと真上に投げます。振ってきたカードの中からあなたが選んだスペードの7をキャッチして見せましょう。私が成功すれば、勝ち。スペードの7以外のカードをキャッチしたり、一枚もキャッチできなかったり二枚以上のカードをキャッチしても私の負けです。」
「僕が勝ったら?」
「あなたが勝ったら、私が今夜行ったマジックのタネを全てあなたに教えて差し上げましょう。私のタネを知ったからには、間違いなくあなたは今後モテモテになるに違いません。その代わり、私が勝った場合は・・・お金でもいただいておきましょうか。10万円。」
「詐欺だな。絶対に僕が不利ではないか。」
「それは違います。なにしろ、私はこのマジックはやったことがありませんから。今申し上げたのはこの場で思いついたものです。ということで、タネがないのです。」
「本当か?」
「本当です。さぁどうなさる。」
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今年のfelling the titanもこれでおしまいです。
読んだりコメントを残して下さった方々、今年出合った方々、ライブを見に来てくれた方々、本当にありがとうございました。来年も頑張りますのでよろしくお願いします。
寒い日が続きますが、くれぐれもお身体に気をつけて下さい。
そして、ステキなお年を迎えられますようお祈りしています。
ヒナミケイスケ