12.28.2006

鶴にのせた希望

少年は純粋だった。

小学三年生の頃だった。ついこないだ外国に引っ越してしまった、幼馴染のまさおくんが病気にかかったと聞いた。両親が話しているのを盗み聞きしてしまっていた。

「あなた、お隣のまさおくんって子いたじゃない。ほら、てっちゃんとよく遊んでた子。外国に引っ越してからちょっと悪い病気になったそうよ。」

「気の毒だな。」

「うん・・・。てっちゃんにどう言おうかしら。」

「何も気の利いたことできないからなぁ・・・。教えるだけ可愛そうかもな。」

少年は盗み聞きしながらもポロポロ涙が出てしまい、ヒックヒック泣いてるとすぐさま起きてることが両親にバレてしまった。どんな病気なのか、ぜんぜん分からなかったが両親が言ってたとおり、自分が無力であることに悲しんだ。

「てっちゃん、千羽鶴って知ってる?ママが教えてあげようか。」

母親に折り紙の鶴の折り方を習い、少年は千羽鶴を折ることにした。母親が言うのだから、それが自分ができる精一杯のことだと分かっていた。新聞紙や画用紙、ガムの銀紙を引き出しにため込んでは夜な夜な鶴を折り続けた。一ヶ月で、207羽の鶴ができた。小学生にしては驚異的な集中力だった。家のあちこちに鶴がちらかってるものだから、母親は出来上がった鶴を集めて大事にビニール袋にしまった。

奇跡というものは起きるもので、幼馴染が病気から無事回復しそうという知らせがあった。

「てっちゃん、よかったわねぇ。きっと、てっちゃんの願いも神様に伝わったのよ。でも、この鶴どうしましょうね。もう385羽もあるわ・・・。」

「これだけでもまさおくんに送ってあげればいいじゃないか。きっと、よろこぶよ。」

「ダメだよ。まさおくんがまた病気になっちゃう。」

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