7.26.2007

あたしは大丈夫なの

自惚れてるとは思われたくないの。
でも、多分あたし、外見的にはブスじゃないわ。
何とも思わなかったのよ、最初は。

ロータリーのバス乗り場で、彼はとても気まずそうに声をかけてきたわ。すいません、200円貸してくれませんかって。どうしても急ぎで帰らなくちゃいけないのに、財布落としちゃって。必ず返しますので、お願いしますって。たかが200円であんなに頭下げられちゃってもね、でも、本当に困ってそうだったから、あたし、彼に200円あげたわ。

新手のナンパかしら、なんて思ってみたりもしたけど。彼は私の隣のつり革だったんだけど、ナンパにしてはずーっと黙ってるのよね。もしかして、ナンパがヘタクソなだけだったのかもしれないけど。目が合うと、ふっとうつむいちゃったりして。悪い男じゃなかったわ。20代だと思うけど、仕事はちゃんとしてる雰囲気ね。洋服はきちんとしてるし、髪の毛も清潔だった。あら、よく見るとちょっとだけ染めてるのね。ミントでも噛んでるみたい。良いところのお坊ちゃまかしら。

五つ目のバス停が、彼の降りるところだったの。もしよろしければ、一緒に降りてもらえれば家はすぐなんで、今すぐ返しますって。早口だったものだから、200円ごときいいわよ、なんて言い出せなかったの、あたし。ついつい、ついて行っちゃった。ダメよね、知らない人について行っちゃったら。でも、家に入らなければいいわよね。家は普通のマンションだったわ。別にガッカリなんかしてないけど。誘われると思ったけど、オートロックの外で待ってて下さいって。とても紳士だったわ。ちょっと経つと財布を持ってエレベータを降りてきたわ。

「すいません、あぁ、財布、家にありました。ご迷惑おかけました。」

「ううん、いいの。ウフフ。」

ちょっと、可愛かった。あたし。

そしてね、あたしバス停に戻ったら最後のバスを見逃しちゃってたの。彼のマンションに戻ってピンポンして、タクシー代1,000円借りることにしたわ。

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