7.08.2007

オートロックの向こう

ドアチャイムが鳴り、私は受話器を手に取った。
オートロックのモニターが起動し、訪問者の顔が画面に映る。

井上源太郎さんのお宅ですか。どなたですか、と私は答えた。私は慎重な性格だ。最近物騒なものだから、オートロックのあるマンションに住むことにしたのもある。訪問者は言う。私は井上正太郎といいます。突然で、しかも信じがたい話ですが私はあなたの弟です。あなたが40年前家を飛び出た後、私たちの父親が再婚し、私が生まれたのです。長い間、あなたのことを探していました。話すことが沢山ありますので、どうか入れてもらえませんでしょうか。

それは、正太郎さん。確かに、突然そういわれてもすぐには信じられません。失礼かもしれませんが、私にとって初対面であるあなたはただの変質者かもしれません。本当に私の弟ならば、何かそれを証明するものはありますか?

源太郎さん、あなたが私を疑うのは無理もありません。いくら弟だといっても、その言葉だけでは見知らぬモノを自宅に入れる理由にはなりません。ただ、困ったことに私には戸籍謄本も免許証も何もありません。これでは、せっかくあなたを見つけることができたのに一度も顔を見ずに帰ることになってしまう。もしよろしければ、あなたがここまで出てきてはいかがでしょうか?

いや、そうともいかない。あなたは私をおびき出して殺そうとしているかもしれない。

困りましたね。

困ったことだ。

父は元気です。

それは、よかった。正太郎さんは、家族はいるのですか?

ええ、最近二人目が生まれました。

それは、よかった。うちは去年一人目が生まれたばかりだ。

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追伸

明日から木曜日まで出張のためお休みです。
メールなど返信できない状態ですので、ご了承下さい。

ヒケ
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追々伸

今日、我が家の最寄駅の入り口を通り過ぎたときの写真です。
私の街は良い感じです。

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