7.25.2007

公共建設

むかしむかし、国境がない時代にイウマという大都市があった。ヘイタイ川に面して建てられた街で、遠くから人が集まる港町として商業が繁盛した。当地の経済が急激に発展していく中、その都市に住むものを羨んだり、妬む者も少なくは無かった。いつか、イウマそのものを乗っ取る野望を抱く隣国が出現するのではないか、と噂されるほどだった。

イウマの大王は住民の不安を知り、都市の周りを深い堀で囲むように命じた。都市の南側は巨大なヘイタイ川なので、残り三方面を掘る計画だった。水も川から直接ひくことが出来るので、都合良くイウマを島国として陸から分離する構想だった。建設は順調に進み、5年後には底が見えないほど深い堀が完成され、予定通りにヘイタイ川の水でいっぱいになった。

仕方がないといえばそこまでだが、イウマは以前に増して世の中から孤立した。立地の都合上、商売は問題なく続いたがイウマに対する冷たい目は変わらず、くわえてそれからはイウマ住民の外の世界に対するパラノイアが深まるばかりだった。困った大王は、住民の声が上がる都度に堀の幅を広げるように命じていくしかなかった。

もはや堀とヘイタイ川の区別がつかないほどの状態となった。かつて設置されていた陸橋はなくなり、イウマに通うものは全て船で行かざるを得なかった。それでも住民のパラノイアはとどまることを知らず、イウマは国を侵略してでも堀は広げ続けた。アトランティスもその一つだった。堀はやがて海となっていった。

イウマ島はヘイタイ洋のど真ん中にある、孤立したリゾート地に形を変えていった。

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