するのか、しないの問題
見渡していると、駄菓子屋が目に入った。すぐそばにあった。何度か通ったことのある商店街だが、今までここに駄菓子屋があることに気づいていなかった。古くからあったような、ボロボロのお店だった。店の奥は暗いが、ちいさなおばあさんのシルエットが見えた。
ちょうどいい。甘いものでも食べるか。
青年は店先のアイスクリームの冷凍庫を覗き込む。懐かしいものばかりだ。白熊、あずき、ホームランバー、アイスモナカに、チューチュー。冷凍庫の重いフタをずらし、ホームランバーを二つ取り出す。ばあさん、これ、二つ。60円だったっけ・・・。他に小銭がないか、手をポケットに突っ込んだ。
はい、ふたつ100円ね。はて、一本50円だったっけ。青年は100円玉をばあさんに渡した。ばあさんは、ちいさなビニール袋にホームランバーを入れてくれた。青年は少し、照れた。
店を出ると、さっき100円玉を拾ったところで小さな子供が泣いている。
ぼうず、どうした。
あまりにも激しく泣くので、理解をするのに手こずった。
100円落としたんだと。これはやってしまった、と青年は少し、悪く思う。そっかぁ、それは残念だな。誰か、おまわりさんに届けてくれるといいな。そんじゃあな、おじちゃんな、このホームランバーを一つやるぞ。アイス買いたかったんだろ。だから泣くのやめな。
今日は実にいいことをした。
青年は残ったホームランバーをくわえながら帰っていった。