9.30.2009

北極星と彗星

午前3時、とある秘密のアジトで二人の強盗が祝杯をあげていた。長い月日をかけて計画していた大がかりの銀行強盗を大成功におさめたばかりだった。無論、プロとして金さえ手に入れば成功も大成功もないのかも知れないが、本件に限ってはあまりにも段取りが出来すぎだったため自画自賛しなくにはいられなかった。ものの三分間でガードマンを制圧し、客をみな床にふせさせ、拳銃を責任者につけて金庫を開けさせて、誰一人正体を見られることなく逃げられたのだから。パトカーのサイレンが遠くに聞こえたころは、とっくに金はかくされていたし、二人はアリバイづくりのためにそれぞれの持ち場に戻っていた。

ほこりだらけのアジトには少し不似合いな、高価な赤ワインを空きカンにそそいで飲んだ。やがて夜が明けるとともに前日の興奮も冷めはじめ、自然と口数も減ってくる。それまではずっと極限の状態でいたものだから、気がゆるんだとたんに疲れと眠気に襲われた。この者にとって強盗は職業であって、モラルどうこう語る以前に生まれつきの才能なのだから仕方ないというほど。そんな人が大きい仕事を終えた後は、多かれ少なかれセンチメンタルになってしまう。明日になれば、二人はしばらくの間離ればなれになる。二人まとまってパクられるリスクを避けたいのが理由だが、せっかく盗んだ金を楽しむ時がなければいけない。

お前は、どうする。

ボラボラ島でも行くかな。
お前こそ、どうする。

適当に合コンでもしていようと思う。また、そちらから連絡くれるな?

おう。じゃあ、な。

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