5.05.2014

課長だって辛い

俺の名前は等々力ツヨシ、26才。ヒーロー名は電子ジャー(グリーン)、特殊能力は主に瞬間移動、怪力、透視。本名がレッドっぽいと同僚からよくからかわれるのだが、性格が内気なため本部判断でグリーン役に回されたのも無理がないと思っている。

前置きが長くなったが、いま私は現場の真っ只中だ。正義側は私一人(変身済み)、悪党側はチンピラ一人(変身能力なし)、被害者はカワイコちゃん一人(推定89/60/93)。カワイコちゃんはチンピラにナイフをクビにつけられており、間の距離はざっと5メートルだろう。

さほど難しいシチュエーションではない。悪党側と力の差があるので、まず自分の安全は確保されている。となるといかに被害者を華麗に無傷で救い出し、後ほどデートに持ち込むかが課題である。一般的な対処方として、瞬間移動で悪党の背後に回り込む➡︎ナイフを持つ腕を封じる➡︎被害者を安全な位置に突き放す➡︎悪党をぼこる、という段取りがまず思い浮かぶが、運びとしては早すぎ、雑、地味すぎる。カワイコちゃんへのアピール度も低く、後のデートの確率も危うい。デートがないとなると、放送時間残り五分間のドラマに穴が空いてしまう。一生懸命悪さをしているチンピラに対しても薄情というものだろう。

というわけで、面倒ではあるが説得からはじめるのがお約束だ。「バカな真似はやめろ!」「うるせー、この娘の命が惜しければその洗米バスターの電源を切れ!」「なに(汗)!今夜の夕飯はどうなるんだ…」「ふはは、さすがの電子ジャーも怖気ついたか。」

という調子の駆け引きで2、3分。敵が巨大化しないパターンなのでもう少し長引かせてもいいのだが、ソロ活動で盛り上がり過ぎてもなんなのでここら辺で勝負をつけることにする。透視能力を使い「やい悪党!娘の下着の上下の色がベージュとグレーとバラバラだ!」「なーにー」「でゃあ〜」。ぶん投げた洗米バスターがチンピラの膝に直撃する。すかさず正面からえい、とう、とチンピラをぼこる。

我ながら出来のいい回だったが、娘はその足でブルーとのデートにいってしまった。五人組はもう卒業しよう…。

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