12.21.2017

インスピレーション

寒波が都会を包み、ぐっと寒くなった。ただでさえ出かけるのを躊躇する寒さなのに、繁華街のビル風が追い打ちをかけてくる。新宿駅の東口を出て、立ち止まって空を仰ぐ男の姿がある。

山本祐一31才独身会社員、本日クリスマスショッピングのラストチャンスだ。プレゼントを贈りたい相手は田中聡美28才フリーランス通訳、付き合い始めてからわずか3週間でクリスマスイブのデートの約束をしてしまった。ひとりぼっちのクリスマスと比べて幸運なのだろうが、本人にとってこの瞬間は紛れもないピンチだ。制限時間、おおよそ2時間後。

いきなり指輪とか高価なものは論外だ、だが、特別感は出したい。純粋に喜んでもらいたいので彼女の趣味や特徴に上手く乗っかりたい、だが、情報不足、趣味は海外旅行と外食と言われている。自分のセンスもアピールしたい。乏しいながらも、センスが勝負処だ。

ベクトルやパラメータはきちんと整理して挑んだはずなのに、山本は帰りの電車で頭を抱えている。

いったいなぜ、招き猫なんか買ってしまったのだろう。

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