2.26.2012

見て守る

塊優太26才。私は大手町のとあるオフィスビルで夜勤の警備の仕事をしています。大学を卒業したばかりの頃はごく一般的な就職をしていたので、まさか自分がこの年でこのような仕事をしているとは想像できませんでした。大学時代の友達も何人か、昼間はこの建物で働いていると聞きます。僕の方から連絡することはありません。自分が恥ずかしいというより、他人に気を使われる方が辛いです。

私は野心家ではありませんが、正直これでいいと思っていませんし、心配する親に申し訳なく思っています。でも、いまはこの状況が心地良いのも否めません。

私のシフトは夜10時からはじまります。この時間まで残業する人はいませんので、このドンガラとなった巨人のなかにいるのは私と、監視カメラのモニターを担当するパートナーだけになります。ちなみにパートナーは大分年も経験も上で、この建物の監視カメラを20年以上も眺めてきた人です。同じ建物でも20年前はもっともっと人が大勢いて、それも夜遅くまでガツガツ働いていたそうです。

いかがわしい警察官のような服に着替えて、懐中電灯と予備の単一電池をポケットに入れて見回りに出かけます。はじめての見回りのとき電池が切れて、都会なのに遭難しうることを知りました。多少慣れた今でも真っ暗は怖いです。

最上階の17階までエレベーターに乗り、そこから階段で下りながら巡回します。この建物には色んな会社があって、階によって雰囲気が変わります。借り手のない、抜け殻のような階もあります。時々、ガラガラの階で窓の外の夜景をみながら休憩します。

コメント0archive

Post a Comment

<< Home