12.01.2010

いらない占い

地平線が赤に染まると思ったらカラスの鳴き声が耳に届き、あっというまに外は暗くなった。

窓際で子供が手にあごをのせて星空をみている。目を離さず、居間で夕刊を読んでいる父親に声をかける。

父ちゃん、星がいっぱいでてる。

父親は新聞から目を離さず、あぁ、とうなずく。お前、知ってるか。

何?

星のひかりはな、何百光年も遠くから俺たちの見えるところまで来てるから、今見えてる星の姿はずーっと昔の姿なんだ。

どれくらい昔?

何十万年、いや何億年前かも知れないな。

大変なんだね。

まあ、大変と言えば大変だな。
その星はいまは無いかも知れないってこと?

そう。何億年前になくなった星かも知れないからな。恐竜が絶滅したころの星かも知れないな。

父親が最後の一言を口にしたとたん、子供はかぶせるように叫んだ。

父ちゃん、星が急に全部消えたよ?

夕刊から目を離さずに父親はいう。一億年先のことなんだから、騒ぐことでもないだろう。

ひとすじの汗が父親の額にでていた。

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