いらない占い
地平線が赤に染まると思ったらカラスの鳴き声が耳に届き、あっというまに外は暗くなった。
窓際で子供が手にあごをのせて星空をみている。目を離さず、居間で夕刊を読んでいる父親に声をかける。
父ちゃん、星がいっぱいでてる。
父親は新聞から目を離さず、あぁ、とうなずく。お前、知ってるか。
何?
星のひかりはな、何百光年も遠くから俺たちの見えるところまで来てるから、今見えてる星の姿はずーっと昔の姿なんだ。
どれくらい昔?
何十万年、いや何億年前かも知れないな。
大変なんだね。
まあ、大変と言えば大変だな。
その星はいまは無いかも知れないってこと?
そう。何億年前になくなった星かも知れないからな。恐竜が絶滅したころの星かも知れないな。
父親が最後の一言を口にしたとたん、子供はかぶせるように叫んだ。
父ちゃん、星が急に全部消えたよ?
夕刊から目を離さずに父親はいう。一億年先のことなんだから、騒ぐことでもないだろう。
ひとすじの汗が父親の額にでていた。
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