10.24.2010

ボトルネック

金田一郎は今年で70才になる。定年をとっくに過ぎているというのに、都内にある小さな貿易会社のオーナー社長をいまだに続けている。本人曰わく、いつでも次の社長への綱渡しをする準備はできているが、会社を引っ張っていける者がなかなかでてこないのが問題だ。今の役員の連中は腰抜けばかり、誰一人自分の考えというものを持たない。こんなのに会社を任せたら、一番不安がるのは従業員だ。ちなみに、せがれはバカ過ぎて話にならない。

誰か、引退させてくれるやついないかなあ、と笑い交じりに言う。

営業部長の竹田は行き詰まっている。いま取り組んでいる取引は規模が小さいが、内容次第で会社の今後を左右してしまうほどの大事だ。果たして、上層部は理解しているのか。企画書は完璧に書き上げたのに、なぜだか胸の中にあるのは不安ばかり。役員のほとんどはバカだ。頼れるのはせいぜい一人か二人。社長は頭がキレるが発言が予想不能。その予想できない鶴の一声で役員が動いてしまう。こんなので、いいのか。

誰か、社長を引退させてやれるやつがでてこないかあ、と笑い交じりに言う。

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