11.11.2010

「嬉し恥ずかし」とは

大地震がくるまでは、私の職業は役者でした。

いまでもその能力は眠ってるのでしょうが、いまの生活をしている上では現役とはいいがたく、どうもそう名乗り出る気になれません。舞台も、舞台を見に行く人もなくなった今日、私は「役者」ではなく「怪我をしていない31才男」になったからです。

10年前のあの日、私は運良く無傷でしたが、それからは生き延びるために僅かの生存者と助け合っています。地震直後は豊富だと思っていた保存食はとっくに底をつき、我々は無い知恵を絞って農業をはじめました。その外では、飲み水の確保、最低限の医療の技術を身につけるなど、やらなければいけないことは山ほどあります。私が生きてるうちに演劇といった娯楽が復活するかどうか、正直分かりません。

先日、サツマイモ畑でもう一人の女性と収穫をしていました。名前は、サユリだったと思います。単調な作業ですから、気を紛らわせるためにお互い昔話をしていました。彼女は会社員でした。

あたし、イサオさんのこと知ってるわ。あなた、俳優のサバ・イサオでしょう?テレビにもでてた。あたし、ファンだったんだから。

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