4.15.2010

タイトロープダンシング

憲正は7才。ママは31才。

ママの決めごとで、憲正は夜は8時半までに寝なければいけない。ママの理由は、そうしないと憲正がちゃんと朝起きれないから、と、そうしないと憲正が二組のいじめっ子のゲンちゃんみたいに脳みそがトーフな子になっちゃうから。でも、憲正がママの決まりごとをきちんと守ってる理由は朝寝坊でもトーフでもなくて、8時半までに寝ないとママがすんごく怒るから、である。一度だけこっそりベッドから抜け出したのがばれたことがあって、そのときママがとてもとても大きな声で怒鳴ったから、となりの家の窓に灯りがついたのを見たことを覚えている。

なぜあんなに怒らなければいけないのかな、と憲正は考えていて、本当は憲正のためを思ってるのではなくて、なにか憲正から隠してるんじゃないかと思うようになった。そんなことを考えていて、時計の針をふとみるともう10時だった。いま、ママは何をしてるのだろう。パパはもう帰ってきただろうか。胸がどきどきした。

パパもその秘密を知っているだろうか。いや、パパはもっともっと遅いかもしれないから、ママだけの秘密だ。

憲正はゆっくり起き上がり、足の裏にすいつく冷たい床を感じた。

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