4.03.2010

緊張感と半溶けの氷

ボンボンの悪友の誘いにのってしまって、気づけば麻布の薄暗いバーに一人で取り残されていた。水野、お前木曜日ヒマだったら、コンパするけど来ない?メンツが足りなくてさ。この悪友こと、金子とはこういうやりとりをする割には、思い返せばあまり親しい仲ではなかった。何年生だったか、もっと言えば本当に同じ大学に通っていたかも定かじゃなかった。その金子はさんざんお酒を飲んで騒いだ後、突然風のように二人の女の子をつれてどこかへ行ってしまった。きっと僕は、彼の思う役割を無事に果たしたのだろう。

僕がもう少しお金に余裕があって、着ている洋服がせめて穴だらけのジーンズでなかったとしたら、この状況をもう少し上手く乗りきれたのかもしれない。そうだったら、カウンターでハイボールでも頼んで、マスターに話しかけてやれやれ今日はひどい目にあいましたよ、良いお店ですねまた来ますよと、痛々しいながらも笑いを交えて一日を終わらせることができただろう。ただ現実として僕は仕送り頼みの極一般的な学生であり、まさに穴だらけのジーンズをはいている。おそらく、持ち合わせの残金500円も、顔にでているに違いない。

マスターもバーの雰囲気を乱すわけにはいかないから何も言わないが、本当は僕をすぐにでもつまみ出したいと思っているはずだ。よく見ると、タキシードに身を包んでいるがかなり筋肉質だ。

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