6.04.2009

たずねてきた

深夜のこと。家族を起こすといけないので、私は廊下の電気をつけず、両手で壁をたどってトイレの扉を探していました。ところが、廊下は真っ暗ではありませんでした。玄関の外の天井照明が幽霊電球になっていて、玄関の窓を通して不気味に点滅する灯りが廊下を照らしていました。チカチカッ。チッカチカ。

あ~あと思いながら用をすませ、手を洗って、玄関の方に向かいました。ドアを開けると確かに、我が家に一番近い照明が故障していました。明日にでも管理人さんに言っておかなければね、と自分に言い聞かせ、ドアを閉めようとしたところ、背筋がゾッとしました。足元にゴキブリが。ひっ、と後ずさり。

虫は虫でも、幸いゴキブリではありませんでした。そこにはコオロギが一匹、よくよく見ると私を見上げていました。鳴いていたので、オスだったのでしょう。というより、鳴いていたということは、求愛していたのでしょう。ただ、残念ながら私は人間、しかもオスなので、彼の役には立てません。

彼も私の正体を間もなく悟ったようで、ゲっと思ったのか瞬時に鳴き止みました。気まずい空気がすーっとその場に降り、にらめっこが、にらめっこが。らちがあかないので、私は一旦退散し、子供の本棚から虫の絵本を取りに行きました。たしかにコオロギの写真もあったはず・・・あった。コオロギのページを開いて、玄関のコオロギに見せました。求めてるのはこれか?しかし、鳴かない。

「ブス」か?あ、ちがう、これも「オス」だったか。

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