4.24.2009

鳩のペースで歩く

正午の公園は、人でいっぱいだった。よく晴れた日だったので、多くの人はお弁当なりコンビニで買ってきたお握りを持って自然と集まってくるのだった。この公園は都会のオフィス街のど真ん中にある割りには広い。入り口から入り広場を真っ直ぐ進むと、奥の奥のそのまた奥に、子供の遊技道具がそろった猫の額のような広場がもう一つある。滑り台、ジャングルジム、ブランコの三点が義務的に設置されている。子供広場は木陰に囲まれ、今一つ人を寄せ付けない雰囲気がただよう。子供は一人もおらず、さっきの大きい広場で席を確保できなかったと思われる会社員が一人淋しくブランコでサンドイッチを食べている。

時は2031年、これが、大人が快適に暮らすまち大東京。いま私たちがいる場所には昔、大手商社の本社ビルが建っていた。オリンピックの年に会社が傾きはじめ、翌々年には完全に姿を消した。跡地の扱いについてはその後行政が踏み込んで、都会の緑化の一環で公園にすることになった。子供が遊べる広場を作るべきか、いまや生まれてくる望みが薄まるばかりの子供のためにどれだけ労力をかけるのか、いやいやそんなこと言うのであれば子孫のための緑化っていったい、と、さんざんやり合った結果が今の公園の姿だ。

時刻はもうすぐ13時、ちらほら大人たちが片付けて会社に戻り始める。一人の女性が乳母車を押して公園に入り、小さい方の広場に義務的に向かう。すれ違った会社員の何人かは、こんにちはと母親に挨拶を交わしたり、寝起きで少しご機嫌ナナメ気味な女の子の顔をみて微笑む。

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