2.19.2009

そのときは手を握って

仲の良い老夫婦、林田秋男と恵子夫人。大した蓄えはないが、年に一度は二人で温泉旅行にいくようにしている。定年退職してから湯布院、別府、箱根、草津そして今年は少し足を伸ばして北海道の阿寒湖。春先に恵子が不明な病で熱を出し、今年は見送りかと思っていたが、秋になって医者に改めてみてもらったところ大丈夫でしょう、と嬉しい結果となった。

林田さん、歳をとっていくにつれて、身体が変わってくるのは当然のことです。一つ一つの異変に気を配っているより、元気なうちに前向きに人生を楽しんだ方が何よりの療法ですよ。奥様も今は普通の生活に戻れたのだし、連れていってあげてください。お酒の飲み過ぎだけには気をつけてくださいね。

二人は北海道を存分に満喫した。お祝いとして、秋男は宿も料理も少し奮発してみた。恵子もとても嬉しそうだった。三日目に帰りの飛行機に乗った。

秋男さん、来年も私たちこのように旅行に行けるといいですね。

そうだな。来年も、行けるといいな。

私が先に逝ったら、秋男さんはそのまま旅行に行かれてくださいね。

そうだな、どうするかな。君が先に逝ってしまったら、一人になってしまうからな。

淳二さんを連れていけばいいわ。

ああ、やつは仕事と家族で手一杯だろうさ。じゃあ、私が先に逝ったらどうする?君は淳二の家族でも連れていくかい?

まあ、そんな。三人がかりでこんな婆さんの相手しなくてもいいこと。

あはは、そうかそうか。

うふふ、そうよそうよ。

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