2.04.2009

迷子といりくる愛の行方

ネコのコタロウが帰ってこないな。夕飯の時間にもなるのに。

妻は台所のながしに向かって鍋を洗っている。私はテーブルで萎びた枝豆を前に、生ぬるくなった缶ビールを飲んでいる。私が分かりきったことを口にしてしまってから、お互い一つも言葉を交わさず二十分ほど経ってしまっているのだろうか。

コタロウは半年前にペットショップで買ったアメリカンショートヘアのメスだ。妻はそれまで一度もペットを飼いたい素振りを見せたことがなかったが、私が半ば冗談で家に連れてかえるかと言ったら、頭をゆっくり縦にふった。子供もいないし、頻繁に旅行に行くような夫婦でもないものだから、決断は早かった。

妻はもとから口数の多い人じゃないが、コタロウを可愛がっていることはすぐに分かった。仕事から帰ると、コタロウはたいてい妻の膝にのっているか、彼女の脚に巻き付くようにしていた。ちなみに、「コタロウ」という名前を付けたのも妻だった。子猫の性器は実に難しく、ペットショップでも性別を誤ることもあるようだ。ただ、メスであることが判明しても妻は名前を変えたくないといった。

コタロウでいいの。

その決心は固かった。私からしてみれば、コタロウであろうとモモコであろうと、ネコはネコなので妻の好きなようにさせた。

明日は、ビラでも書いて街の掲示板に貼りに行こうと思っている。

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