1.14.2009

プレイガール

「かくれんぼする子、この指とーまれ」

公園の中心で小さな男の子が、人差し指を天にさして歌うように叫ぶ。今現在、まだ午後3時なのに早々周辺の建物も夕日のオレンジを受け、冷たい夜風も目覚めようとしている。僕だったら、もしかしたらこんな時間になってこの指に誰一人止まらなかったらどうしよう、と少しくらいは不安になるかもしれない。実はかくれんぼなんかしたくないのに、嫌われたくないヤツだけが嫌々あつまってきたら僕がイヤかなぁ、なんて思うかもしれない。

ただ、この男の子に時間制限の概念はない。叫べばきっと子が集まると自信に満ち溢れている。かくれんぼは楽しい。そして、まだ暗くない。他の子もきっと、似たような考えなのだと思う。

案の定、子供が7、8人群がってくる。

指に止まれといったから、必ずしも指に止まらなくても良い。要するに、男の子に近づくなり、声をかけるなりすれば十分な意思表示となる。ただ、中にバカ正直に本当に指に止まろうとしているのが、一人いる。

その女の子は男の子より相当身長が低いのにも関わらず、男の子をよじ登る勢いで人差し指を両手でつかもうとしている。余裕たっぷりだった男の子もさすがにあっけにとられて、やめろよぅ、と女の子を振り払おうとする。

「あたしも絶対、かくれんぼするの」

「あいたたたた」

指をつかまれた。

「あたし、絶対鬼じゃなきゃイヤだから」

勝ち誇ったかのように笑みを浮かべる。

そのとき初めて、男の子は今日帰れるのかなぁ、と思った。

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