9.15.2008

小さな出会い

東京都内に住む戸坂ミナミ、27才。夫は単身赴任で名古屋にいる。
今この瞬間、人生でこれ以上とない焦りを感じている。
陣痛がはじまったのは朝の4時半ごろ。

準備は万全のはずだった。かけつけの病院の住所、入院用のトランク。あとは、救急車をよぶだけ・・・のはずだった。昨夜見たテレビ番組が良くなかった。ワイドショーで、ある患者が救急車にのったまま病院にたらい回しされ、結局亡くなってしまっている。戸坂ミナミはふと思った。

タクシーで病院に直接いけば、さすがに追い返されることはないだろう。
タクシーを拾った方が、幾分早いかもしれない。

戸坂ミナミは大きなトランクをかかえて、家から近くの大通りに出た。こういうときに限ってタクシーがなかなかこない。こんな時間でも少しは通っていてもおかしくないのに。5分待つ。それから、また5分。陣痛の間隔が短くなっているのを感じる。あたし、失敗したかも・・・。今から救急車に電話しても、また更に5分くらいはかかるだろう。

今すぐ、どうにか病院に行かなければ。

そこで現れたのが、ブルーのゴミ収集車だった。
従業員二人は、必死に手を振る戸坂を見て、目が点になった。

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