7.03.2008

風で落ちた果実

ミキオとサトルが道端でばったり会った。

ミキオの足取りがやたらと軽やかだ。サトルはミキオに、何か良いことでもあったかと尋ねると、ミキオはつい先程500円玉を拾ったとのこと。お金をそのままネコババし、すぐ側にあったコンビニでアンパンと飲むヨーグルトを買ったそうだ。

交番なんて、行かないよね。

なにしろ500円ぽっち、だからな。

その反面、サトルはほんの僅か、しかめ面だ。何か悪いものでも食ったかとミキオが尋ねると、偶然にもサトルも先程お金を拾ったんだとか。ただサトルの場合、額が500円「玉」ではなく、一万円札を拾ってしまった。風に飛ばされそうになったとたん、思わず足で踏んでそのまま手にとってしまった。一万円もの金額を何事もなかったかのうようにポケットにしまいこむには後ろめたさを感じた。サトルは少し考えてから、お金を交番に届けることにした。

ところが、だ。

ちょうど交番で届出書を書いてるタイミングで、落とし主が交番を訪れた。年寄りのばあさんだった。どうやらこの街の人ではないらしく、落とした一万円なくしては帰りの交通費がないくらいお金に困っているそうで。結局、一万円はその場で落とし主へ返された。

お年寄りにヘコヘコされて、気まずくてとてもじゃないが、褒美なんかもらえる雰囲気ではなかったよ。

それは、とても気まずいね。いっそのこと、あんたネコババしようと思ったでしょうと、疑われた方が楽だったかもしれない。

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