6.22.2008

遠ざかる青春

私はいつもベランダでタバコを吸うようにしている。
私の妻に言わせてみれば、ベランダでタバコを吸うようにさせている。
微妙な認識のズレはあるが、それについてはまたの機会に話そうか。

今夜、外は久しぶりにざぁざぁ降りだ。マンションの横を通るアスファルトの道も真っ黒に染まり、綺麗に街路灯の白い灯りを反射している。車は一台も走っていない。湿気で重くなった空気を顔で感じる。こんな夜は、いつも不味く感じていた軽めのタバコが美味しくなる。細かい水しぶきがおろしたてのパジャマに侵入しそうだ。一歩下がり、背中で居間の大窓に寄りかかることにする。

二本目のタバコに火をつけた。少し離れたところで、アスファルトの道を通る自転車が見える。男は女性を後ろの荷台に横向きに座らせ、同時に片手で大きな傘をさしている。大変な体勢かと思うが、滑るように大雨の中をスイスイ進んでいく。映画とか漫画でしか見たことがないかもしれない。とても、男前に思えた。その自転車をいつまでも目で追っていた。野次馬根性ではない。目の当たりの風景で、それしか動いていなかったからだった。

男と女と傘と自転車が豆粒くらいに収まるくらいの大きさになったところで、自転車は止まった。目を細めてみると、男と女は話をしているようだ。男は自転車を支えながら立っていた。男はまだ傘をさしているが、よくみると自分の頭の上だけにかかっているようだった。

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