11.15.2007

先のことは分からないから

男と女はUFOキャッチャーの前で立ち止まった。
駅の近くにある、ゲームセンターの路面側に配置されていた。

ガラスケースの中にある景品は、おびただしい数の生命保険の申込書だ。しかも、かなり多くの種類のものが並べてある。保険金の大小だけでなく、終身保険や掛け捨て、がん保険や学資保険、10年後の満了から30年後、ありとあらゆる特約やオプションが揃っている。1プレー/5,000円。

お金を入れるところに、説明が加えられている:

「山椒生命保険相互会社は、お客様の声に応えて今までにない斬新な生命保険販売の手法を編み出しました。このUFOキャッチャーでゲットした申込書に押印して郵便ポストに入れれば手続きは完了です。得意げにわけの分からない保険商品を進めてくる営業マンにうんざりしていませんか?繰り返しお茶に誘い出されては、世間話がてら生活についてネホリハホリ問われることに嫌気を感じませんか?簡単インターネット見積もりが難しすぎて裏切られた気持ちになったことはありませんか?奥様に、いつになったら生命保険のことまじめに考えるのと責められていませんか?正直50年後のことなんか知らねぇ、と言いたくなるときはありませんか?あたかもまじめに設計された保険契約が全てここに!さあ、あなたも夢の巨額保険を目指してレッツゴー。お客様とご家族の安心と安全を、山椒生命保険相互会社は応援します。」

男は1,000円札を5枚投入し、女が見守る中UFOキャッチャーに挑んだ。

ねぇねぇ、シンジ、あのがん保険すごくない?

よぉーし。あっ。

結局取れたのは20年の掛け捨て。死亡保障100万円。特約なし。

男はしゃがんで、景品の出し口から申込書を取り出す。

まぁ、取れちゃったしな。

残念だわね。

これでいっか。

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