10.26.2007

大声で言わなくて良いこと

最近、家族で出かける際はタクシーにお世話になることが多い。

妻が8ヶ月目である。見るからに重そうだ。適度の歩きは出産に向けて体調を整える効果があるらしいが、かといって依然、無理は禁物だ。てなわけで、タクシーである。心と財布が痛むが、そんなものだと思っている。どの道、遠出はしないのでなんとかなっちゃうものである。そして、こう頻繁に乗っていると、二人目が生まれてくる実態も影響して

「もうそろそろ、クルマのことも考えなきゃね」

と自然と話題が流れる。

隣の車線で流れる車を窓からみながら、あーだこーだ打ち合わせをする。息子はどうやら全てのクルマがお気に入りのようだ。私は赤い車に乗りたい。妻は、燃費がいいやつ。やがてナナハンの大型バイクがババババと大きな音をたてながら通り過ぎる。

「バイクもいいな」

と冗談交えて言って見る。定番の話題である。

「ダメよ、運動神経ないんだから」

「じゃあ、50ccだったら」

「電気自転車で我慢しましょう」

「全然、かっこよくない」

「似合うからいいのよ」

てな調子である。息子もケラケラ笑う。

「とにかくね、バイクは危険なのよ。事故した友達だって、いるのよ。」

そして、それまで無口だった運転手が口を開く。タクシーに乗るときよく顔を見ていなかったが、50前後の紳士だ。やわらかい口調で、お客さんやっぱりバイクは危険ですよ、と静かに言う。とてもやさしい感じで。

「実はね、私の息子もバイクに乗っていて。かなり昔に事故で亡くなったんですけどね」

即答できるわけがない発言である。信号2、3分沈黙が続いた。

「そうなんですか。おいくつだったんですか?」

「27ですね。」

「あなたと同じじゃない。」

そんなところで会話は中断し、目的地に着いてしまった。

運転手さんの心境を不思議に思う。

一瞬とはいえサービス業の立場を破棄しない限り、なかなか言えないことだと思う。

そんで、バイクは別にいいかな、と思うようになったのでした。

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