9.11.2007

子供と数字は残酷

富田の魂は、エンマ大王に会うための列に並んでいた。もう、2、3日待っただろうか。もうすぐ、自分の番だ。時の流れは、もう気にならない。列の先頭はどうやらチンピラさんの魂で、富田は前から2つ目。富田のうしろはシジミの魂だ。

チンピラの魂がエンマの間に呼び込まれた。その魂は相当びびっていたためか、たまたまエンマの間へ入るとき、扉を半ドアにしていったため富田はそのチンピラの裁きの様子を覗くことができた。エンマ大王は本をぺらぺらめくりながらゴニョゴニョしゃべっているが、何を言っているかは聞き取れなかった。

と、しばらく経つとエンマは大きな声でどなった。

「極楽にいけぃ!次!」

今度は富田がエンマの間に入った。前の魂と同様、エンマは大きな本をぺらぺらめくり始めた。ゴニョゴニョ数を数え始めたのだ。

「1,345、1,346、1,347・・・こりゃあ、針の山だな、こりゃあ。」

富田は納得いくはずがない。

「エンマさまお言葉ですが前のチンピラが極楽行きで私が針の山というのはどういうことでしょうか?私はそれなりに、一生懸命生きましたし、人も傷つけたことがありません。子供だって育てましたし、家族も私が極楽に行けるよう信じているというのに、なぜあんなろくでなしが極楽行きなのでしょうか?」

「ん?チンピラ?ああ、貴様の前も魂か。あれは、極楽行きで間違いないぞ。なにしろ、アリンコの数がな、少ないんだ。」

「アリンコの数・・・ですか?」

「男の子の場合、0歳から5歳の間に踏み殺したアリンコの数が指標なのだ。お前は1,348匹。あのチンピラは239匹。明白だ。」

「0歳から5歳の間に踏み殺したアリンコの数だけでさばきが決まるというのですか?」

「ざっくり言えばだな。まぁ、そういうことだ。」

「ならば、私の6歳以降の行い全てが無意味だったというのですか?」

「6歳以降の行いも、結局アリンコ指数の延長線なのだよ。」

「しかし、エンマさま」

「本質的なものだからな。」

「本質的なもの?」

「仮に、貴様の日々の行いが6歳以降で大きくパターンが変わったとしても、カンニングのようなものだからな、もうあきらめろ。」

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