イタチごっこ
41歳にもなって、人見知りが直らない鈴本さんちの旦那。
この頃、主婦の間で話題になっている。
話題にならざるを得ないのかもしれない。
三沙子婦人は36歳だ。子供はいない。
新しいマンションに引っ越してから、三沙子は2、3ヶ月に一度は友達を家に招待してもいい、という約束を夫としていた。来る日はたいてい土曜日か日曜日の、午前中かお昼頃だった。お茶をしたり、ランチでもてなしたり。一応、彼女は夫に気を使い、いつも数週間前もって友人が来る日を伝えるのだった。伝える時点では夫はいつもあっさりと、いいんじゃない、とのんきにいうのだ。今度は挨拶くらいしてくれるのかしら、と毎回期待をさせるのだった。結婚して6年目だが、夫はいまだ彼女の友人に顔すら見せていない。
ドアベルが鳴る。三沙子はドアを開けに行く。行くが、ドアを開ける前に立ち止まってふと後ろを向く。夫はもう、リビングルームにいない。既に二階の書斎に避難したみたいだ。三沙子は小さくため息をつき、ドアを開け二人の友人を部屋に案内する。
「ねぇねぇ、ミサの旦那ってお仕事なんだったっけ?」
「メーカーよ。」知ってるくせに。
「営業やってるんでしょ?」
「そうよ。」
「今日はいらっしゃらないの?」
「仕事が忙しいみたいなの。」
そうなの。営業職よ。営業職なのにあたしの友達に会うのをイヤがるのよ。
友人も悪い人ではないので、三沙子の表情が曇るのを見て話題を変える。数時間過ぎ、昼食もコーヒーも済ませ、友人たちはようやく帰る。
「また来るねー。」
「うん、また来てね。」
タイミングよく、階段の上で夫が顔を出す。
「今日はどこいこうか?ご飯でも食べに行く?」
この頃、主婦の間で話題になっている。
話題にならざるを得ないのかもしれない。
三沙子婦人は36歳だ。子供はいない。
新しいマンションに引っ越してから、三沙子は2、3ヶ月に一度は友達を家に招待してもいい、という約束を夫としていた。来る日はたいてい土曜日か日曜日の、午前中かお昼頃だった。お茶をしたり、ランチでもてなしたり。一応、彼女は夫に気を使い、いつも数週間前もって友人が来る日を伝えるのだった。伝える時点では夫はいつもあっさりと、いいんじゃない、とのんきにいうのだ。今度は挨拶くらいしてくれるのかしら、と毎回期待をさせるのだった。結婚して6年目だが、夫はいまだ彼女の友人に顔すら見せていない。
ドアベルが鳴る。三沙子はドアを開けに行く。行くが、ドアを開ける前に立ち止まってふと後ろを向く。夫はもう、リビングルームにいない。既に二階の書斎に避難したみたいだ。三沙子は小さくため息をつき、ドアを開け二人の友人を部屋に案内する。
「ねぇねぇ、ミサの旦那ってお仕事なんだったっけ?」
「メーカーよ。」知ってるくせに。
「営業やってるんでしょ?」
「そうよ。」
「今日はいらっしゃらないの?」
「仕事が忙しいみたいなの。」
そうなの。営業職よ。営業職なのにあたしの友達に会うのをイヤがるのよ。
友人も悪い人ではないので、三沙子の表情が曇るのを見て話題を変える。数時間過ぎ、昼食もコーヒーも済ませ、友人たちはようやく帰る。
「また来るねー。」
「うん、また来てね。」
タイミングよく、階段の上で夫が顔を出す。
「今日はどこいこうか?ご飯でも食べに行く?」
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