2.09.2007

日時計の子孫

四人の子供が林の中で遊んでいた。
日が暮れるころ、一人が言い出した。

もうそろそろ暗くなるから、家に帰ろうよ、という。

「それじゃあね」

四人はその場で別れて、家に帰っていった。この林は四人の住むそれぞれの家の、ちょうど中心にあったのだった。一人は北にある、白い壁の家へ。一人は東の、赤い屋根の家。一人は南の緑の芝生の家、そして最後の一人は西の青いドアの家へと向かった。

いや、向かおうとしたのだった。

いつものことなら、西に暮れて行く太陽を基準にそれぞれの方角を迷わず知ることができたが、今日は夕焼けがよく見えなかったのだった。曇り空なのに加えて、頭上の林冠が残り少ない光をも遮っている。北の子は気がつけば赤い屋根の家の前に立っていた。そうとなると、必然的に東の子は緑の芝生の家、南の子は青のドアの家、西の子は白い壁の家に行ってしまっていることになる。

四人は林で再会した。夜はすっかりふけてしまっていた。今度は方角は分かったものの(東の子は、もともと北の子が誤って進んだ方角に進めば帰れるのだ)、暗い夜道を歩くのが怖かった。夜はオオカミが出る、と噂されていたのだった。仕方なく、四人は背中を向け合って林で夜明けを待つことにした。

眠ってしまうと危険なので、できるだけ会話をするようにした。

「僕らって、迷子なのかな。」

「迷子じゃないよ。帰り道は分かってるんだから。」

「いや、僕らは迷子だよ。」

「なぜ?」

「一人じゃ帰れないんだから。」

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