8.09.2006

馬鹿親馬鹿

僕は22歳の会社員です。
思い出があります。

僕の父親は、僕が中学校を卒業した2週間後に他界しました。胃がんでした。今振り返ってみると、その時期はバタバタしてたなぁ、と、そう記憶しています。勘違いされたくない。もちろん悲しかったし、とても大きなショックでした。ただ、なんというか、自分が悪いやつとして思われるかもしれませんが、あの時期は他にも色んな出来事があって、高校の入学とか、当時の友達とのお別れとか。気づけば「父の死」というのはそれらの出来事と切っても切れない記憶になってしまってるんです。「あの時」として。

それから母親の様子が少しおかしくなったんです。四十九日もとっくに過ぎてるのに、父がまだ周りにいるかのような振る舞いをするんです。食事のときは父の分も作ったり。着もしない背広を何度もクリーニングに出したり。父の話をするときも、なぜかいつも現在形になっていました。父さんの仕事はああだから、父さんはこういうのが好きなのよ、って。

父と長年付き合ってきた母の方が自分よりつらいに決まってる。二人は仲良かったし、母は父と一緒に老後を過ごすのを楽しみにしていたに違いない。多少、不思議な言動は仕方ないと思っていました。ただ、このような状況が1年以上続いたもので、さすがに少し、不気味だと感じはじめました。私は母に尋ねることにしました。

「だって、お父さんいるのよ。周りに。」

不気味だからやめてくれ、と言おうと口を開こうとしましたが、言う前に僕の表情を読み取った母はひどく悲しい顔になりました。それだけは口にしないでほしいように。僕はちょっと後悔しました。それ以降、それには触れないようにしました。高校を卒業してから、母は元通りになりました。後から聞いた話だと、父は死ぬ前に、せめて息子が高校を卒業するまで生きていたいなぁ、と母にいってたそうです。

本当に見えてたかどうかは未だ分かりませんが、どっちでも良かったかな、と思います。

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