世にも卑劣な
とある下町の道角にて。
中年の男性はもう、我慢ならなかった。持っている洋服は全部、丈が長すぎる。意図しているわけでもないのに、そうなってしまう。紺色のスラックスの裾が、ホコリだらけの革靴を隠すかのように、だらしなくたれている。くたびれたブレイザーを羽織っている。電柱によりかかって、貧乏ゆすりをしている。
「おじょうちゃん、どこ行くの?」
「おうち」
「おじちゃんのところへ遊びにきなよ」
男の目はひどく優しかった。少女は男に抵抗しなかった。男は、少女の手をつないで近くの古いマンションの一室に連れて行った。巨大マンションの6階へと、狭いエレベータがゆっくり上る。男はエレベータを出ると、出口の手前のドアに大きな鍵をさす。ドアがずっしり重い。昼間なのに、中のカーテンは閉めきっている。薄い布は赤い夕焼けに染まっていた。小さなタンス、テレビ台、テーブルのシルエットが分かる。男はパチンとスイッチを入れ、白い蛍光灯がつく。
「ジュースもってくるから、ここでちょっと待っててね」
男は少女をテーブルに座らせ、台所に行った。
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「知らない人についていっちゃダメなんだからね」
少女は泣きじゃくりながら頭をふった。
中年の男性はもう、我慢ならなかった。持っている洋服は全部、丈が長すぎる。意図しているわけでもないのに、そうなってしまう。紺色のスラックスの裾が、ホコリだらけの革靴を隠すかのように、だらしなくたれている。くたびれたブレイザーを羽織っている。電柱によりかかって、貧乏ゆすりをしている。
「おじょうちゃん、どこ行くの?」
「おうち」
「おじちゃんのところへ遊びにきなよ」
男の目はひどく優しかった。少女は男に抵抗しなかった。男は、少女の手をつないで近くの古いマンションの一室に連れて行った。巨大マンションの6階へと、狭いエレベータがゆっくり上る。男はエレベータを出ると、出口の手前のドアに大きな鍵をさす。ドアがずっしり重い。昼間なのに、中のカーテンは閉めきっている。薄い布は赤い夕焼けに染まっていた。小さなタンス、テレビ台、テーブルのシルエットが分かる。男はパチンとスイッチを入れ、白い蛍光灯がつく。
「ジュースもってくるから、ここでちょっと待っててね」
男は少女をテーブルに座らせ、台所に行った。
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「知らない人についていっちゃダメなんだからね」
少女は泣きじゃくりながら頭をふった。
コメント1archive
お誕生日おめでとうございました。
そうです、この人昨日誕生日でした。
皆さん宜しく。
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