2.14.2006

世にも卑劣な

とある下町の道角にて。

中年の男性はもう、我慢ならなかった。持っている洋服は全部、丈が長すぎる。意図しているわけでもないのに、そうなってしまう。紺色のスラックスの裾が、ホコリだらけの革靴を隠すかのように、だらしなくたれている。くたびれたブレイザーを羽織っている。電柱によりかかって、貧乏ゆすりをしている。

「おじょうちゃん、どこ行くの?」

「おうち」

「おじちゃんのところへ遊びにきなよ」

男の目はひどく優しかった。少女は男に抵抗しなかった。男は、少女の手をつないで近くの古いマンションの一室に連れて行った。巨大マンションの6階へと、狭いエレベータがゆっくり上る。男はエレベータを出ると、出口の手前のドアに大きな鍵をさす。ドアがずっしり重い。昼間なのに、中のカーテンは閉めきっている。薄い布は赤い夕焼けに染まっていた。小さなタンス、テレビ台、テーブルのシルエットが分かる。男はパチンとスイッチを入れ、白い蛍光灯がつく。

「ジュースもってくるから、ここでちょっと待っててね」

男は少女をテーブルに座らせ、台所に行った。

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「知らない人についていっちゃダメなんだからね」

少女は泣きじゃくりながら頭をふった。

コメント1archive

Anonymous Anonymous

お誕生日おめでとうございました。
そうです、この人昨日誕生日でした。
皆さん宜しく。

3:26 am  

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